四国最大の大学
愛媛大学は法文学部、教育学部、理学部、工学部、農学部、医学部の6学部と、大学院7研究科からなる総合大学です。創立は1949年、医学部が設置されたのは1973年。学生数は約1万人で、四国最大の大学といわれています。キャンパスは主に松山市内にありますが、医学部のみ隣の東温市に位置し、附属病院も併設されています。
保健師コース選抜時期は3年の8月
保健師のコースは選択制を採用しています。学部定員が編入生を入れて70人という中、30人の人数制限があります。選抜方法は近年少し変化しており、選択制導入時は2年次の3月に成績と面接を考慮したうえで決めていました。しかし、2014年入学生からは、試験(公衆衛生関連科目=公衆衛生看護、疫学、保健福祉行政論など)も採用する方針となり、選抜時期は3年生の8月に変更となる予定です。もちろん、保健師コースを目指すのであれば、その前の段階から指定の選択科目を履修することは大前提なので、しっかりガイダンスを聞いて、計画的に履修科目を選ぶ必要があります。
毎年多くの保健師を輩出
愛媛大学から保健師として就職する人の数は、平均すると毎年5~6人ほどでした。統合教育時代のこととはいえ、この数は全国平均から比べると高い数値になります。選択制の学生たちが卒業する頃にもこの傾向は続くと予想されています。看護学科校舎入口のマスコット?
これまでの卒業生たちがしっかりと活動をしていること。愛媛大学というブランドを信頼されていることの証のようで、愛媛県内はもちろん、他県からも大学側に、いい人材はいないか問合せが来ることもあるようです。
原子力災害や解剖も学ぶことができます
保健師教育の特長に目を向けると、まずは県内に原子力発電所(伊方)があることから、2006年頃からいち早く「原子力災害と保健師活動」の授業を取り入れており、災害看護や放射線に関する授業も精力的も組まれています。実習は極力現場に触れながら地域診断に力を入れ、課題を見つけ、方策を立てるところまでしっかり学ばせることをモットーにしています。ほか、看護教育全般の特長としてあげられるのは、愛媛大学の医学科と看護学科、松山大学の医療薬学科の3学科合同授業として、地元愛媛のNPO法人愛媛がんサポート「おれんじの会」の協力を得ながら、がん患者をどう支えるかを学ぶ機会が設けられていることです。
さらに、解剖にも看護学科の学生も関わることができ、単なる見学ではなく、1週間かけて実際に切ることもあるといいます。これは看護を学ぶ上で大変貴重な体験となることでしょう。その意義について「たとえば動脈硬化を説明するときに、教科書で得た知識よりも、実際に血管の中を自分の目で見ている方が実感できますし、後の健康教育などでの説明にも役立ちます。中には2年、3年、4年と複数回参加する学生もいます」と西嶋教授。
先生からのコメント
さて、最後はいつものように先生たちのコメントを掲載します。「私は学生時代に、医療的ケアが必要な子どもを預かり、家族の負担を減らす団体のお手伝いをしていました。その時に接したお母さんたちが『地元の保健師は何もしてくれなかった』という話を何度か聞きました。そういう保健師は作りたくないなと思いますし、地域に出て、地域の人から学んでいける保健師になって欲しいです」(齋藤希望助教)
「その人の暮らしや想いなどを見て、関われるような保健師、そして看護職になって欲しいと願っています。かつて保健所保健師をしていた時期、手探りでの引きこもりの方への家族支援や高齢の結核患者さんのSOSに対応できなかったこと、今思えば発達障害児の育児に悩むお母さんに本当の意味で寄り添えてなかったこと等、なんと独りよがりなことをしてきたことかと反省します。組織の中でできること、できないことがあるかもしれませんが、どうあればいいのかを考え、必要なら変えていくことができる力を持って欲しい。それから、今、子育て支援の中で保健師が活躍していないなと感じることがあります。そこで、学生たちに母子保健を強調し、身近な領域であり、なお且つさまざまな問題の根っこにも、解決の糸口にもなっていくことを伝えようとしています」(西嶋真理子教授)
左から齋藤希望助教、西嶋真理子教授、大学院卒業生の藤田みどりさん
なお、今回の取材には県内の自治体で長らく保健師をした後、愛媛大学大学院で学んだ藤田みどりさん(現、チャイルド・オレンジ・ネットワーク=地域の子育て支援者をバックアップするNPO法人運営委員)も同席し、大学の魅力を先生方と共に語ってくれました。こうした先輩たちがいることも愛媛大学のよいところだと思います。
(大学データ)
愛媛大学医学部看護学科地域健康システム看護学講座:西嶋真理子教授、斉藤功教授、齋藤希望助教
定員:70人
保健師コース定員:30人
保健師コース最終選抜時期:3年8月