ウナギについて知ろう

いろいろな人に、ウナギの話をすると、もう絶滅するんだよね?養殖なのに絶滅するの?といった反応が返ってくる。養殖と言ってもまだ完全養殖ではない、天然の稚魚漁をして養殖池で大きく育てて出荷する。そして絶滅しないように対策を始めている。だからもっとウナギについて知らなければいけないと思った。消費者としても関心を持ち、ウナギについて知り、各個人が考えることが大切なのかもしれない。鰻漁師、養殖業者、加工業者、輸入業者、量販店、鰻専門店、消費者、環境団体、周辺国など立場の違いで意見も違う。資源を保護すること、食文化を維持すること両面からの対策が必要のようだ。現状について業界専門誌「日本養殖新聞」取締役 高嶋茂男氏にお話を伺った。
ウナギについて知ろう

ウナギについて知ろう


本当にウナギは食べられなくなるのか?

2014年、IUCN(国際自然保護連合)が天然ウナギ漁獲量やシラスウナギ漁獲量のデータを基にニホンウナギを絶滅危惧IB類(EN)に指定した。「ニホンウナギ稚魚 国内採捕量の推移(水産庁ホームページより)」このグラフによると、昭和30年代のピーク時には250トン近くの漁獲量を記録しているが、昭和60年代以降は10~25トンの水準。このデータは後に水産庁が修正をしている、昭和50年代まではクロコ(10~50gほどの子供の鰻)の漁獲量も含まれていると考えられているのだそうだ。漁獲量について具体的なデータが無いのだ。高嶋氏によれば、このデータをどう捉えるかで大きく印象が変わる。減少の要因として海洋環境の変動、生息環境の悪化、シラスウナギの乱獲が指摘されているが、特定されていないという。
ニホンウナギ稚魚 国内採捕量の推移

出典「ニホンウナギ稚魚 国内採捕量の推移(水産庁ホームページより)」


「日本は世界のウナギの7割を消費している」は間違い

「日本は世界のウナギの7割を消費している」といったことを新聞、テレビで見聞きすることがある。元になったデータはTRAFFIC(資源保護団体)のパンフレットの「世界の生産量に対する日本の消費率」ではないかという。これは2000年当時のデータを用いていて、世界の生産量約20万トンに対して国内消費量は約15万トン。2000年当時、日本の消費量が世界の生産量の約7割を占めていた事は間違いない。では2012年ではどうか?同様の算出方法で最新のFAO(国際連合食糧農業機関)のデータを用いると、世界の生産量23万6,344トンに対して国内消費量は3万7,203トン。現在の世界の生産量に対する日本の消費率は15.8%となる。高嶋氏は、メディア報道の数字がクローズアップされることで、国際的な批判が高まるのではないかという。

IUCNレッドリスト指定には法的な拘束力はないが、各国の政策担当者などがIUCNのレッドリストを最も権威のある資料として活用している。そのためニホンウナギの保護を求める国際的な世論が高まることが予想され2016年のワシントン条約締約国会議でニホンウナギが規制対象として提案される可能性がある。ワシントン条約は国際間の貿易規制であり、国内での捕獲・利用を規制する物ではない、輸入のウナギが規制されるのだ。
ウナギ養殖池

ウナギ養殖池


持続的な資源管理のための取り組みが始まっている。

持続的な資源管理、食文化維持のために

持続的な資源管理、食文化維持のために

ウナギ資源の全体像が不明確であるため資源調査が急務だ。ニホンウナギは黒潮にのって、中国、韓国、台湾、日本にくるため地域間の持続的な資源管理が必要となる。取り組みとしては、養鰻管理団体として一般社団法人「全日本持続的養鰻機構」の設立、養殖池入れ量の数量管理と池入れ量の20%削減、養殖業者を届出制とするなどの対策を行っている。ウナギの生息状況調査も行っているが、見かけだけでは養殖放流分と天然分の見極めができないため、耳石(じせき)の分析で明らかにするという、時間のかかる作業となっている。ちなみに耳石とは内耳にある微小な石で、顕微鏡で見ると木の年輪のような模様があり、孵化してからの日数が分かるため、天然ウナギか養殖ウナギかを見分ける材料となる。

期待される「完全養殖」は水産総合研究センターで2010年に完全養殖に成功はしているが、ウナギの稚魚に与える特殊な餌(サメの卵)の供給問題など実用化に向けてはまだ問題が多いようだ。そして行政、業界、有識者が集まる意見交換の場として、シンポジウム「うな丼の未来」が2014年には第二回目の開催となっている。今後、ウナギがどうなっていくのか関心をもって、消費者個々人が資源として、食文化としてウナギについて考える時なのかもしれない。今回、取材のご協力をいただき、私にも分かりやすく丁寧に教えてくださいました業界専門誌「日本養殖新聞」の高嶋氏に感謝申し上げます。

■取材協力「日本養殖新聞」
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