それぞれ特徴が出たスタイル
ヤマハ ボルトに関しては、「ハーレーのスポーツスターに酷似している」と言われます。フロント19/リア16インチという前後ホイールに細長いフューエルタンク、車体の流麗なシルエットなど、スポーツスター XL883N アイアンにかなり近しいもの。全体的にダークなグラフィックもイメージを似せてしまっているところでしょう。日本でのスポーツスター人気は本場アメリカ以上とも言われているので、マーケットとしては非常に魅力的と言えます。ボバースタイルの特徴をしっかり掴んだボルト、まさにモダンクラシックと言うべきデザイン性が表現されており、細部の作り込みはさすがヤマハとうならされるレベルです。ここで意見を分けるのが、比較対象としてハーレー・スポーツスターを持ち出すか否か。スポーツスターと見比べると、似て非なる者同士にもかかわらず、後出しジャンケンのような印象が生まれてしまいます。
私自身もスポーツスター オーナーなのでついそうした目線で見てしまいますが、現代版にアレンジされたグラフィックとはいえ、デジタルメーターやテールランプ、ウインカーなど、もう少しクラシカルな雰囲気を落とし込んでほしかったなぁ、というところ。このあたりは、今後ヤマハというメーカーがどう手を加えていくか、見守っていきたいですね。
一方、そんなスポーツスターの弟分として見られがちなストリート750ですが、すべてが別モノ。エンジンそのものもそうですが、フロント17/リア15インチという前後ホイールに1,535mmという長いホイールベース(XL883N アイアンは1,515mm)など、オートバイとして根本的に構造が異なるモデルと言えます。実際に試乗してみても、これまで乗ってきたさまざまなハーレーダビッドソンとは似ても似つかない。良い意味でのニューカマー、それがストリート750です。
ストリートシーンという“新しいカテゴリーへの挑戦”として生まれたストリート750、グラフィックに関して言えば、平均点以下としか言いようがありません。理由は、110年以上の歴史が育んできたセンスやハーレーダビッドソンとしての薫りが感じ取れないから。発表時、「往年の名車、XLCRをイメージしたカフェレーサー」とH-D本社から説明がありましたが、実際に見比べたら似ているとは言い難い。
税込みで85万円という価格は大変お値打ちですが、ノーマルのままだとスタイリッシュな印象は皆無。とすると、これまたハーレーのお家芸であるカスタムという選択肢が浮かんできます。そう、この世に一台だけのオンリーワンスタイルに向かうことこそが、ストリート750のアイデンティティなのです。
見比べたらこんな違いが
並べてみると、目に見える違いが浮き彫りになりました。ラインが平坦なストリート750に対し、ボルトは盛り上がったタンクと沈み込んだシートが流麗なラインを描いています。タイヤの大きさもご覧のとおり、ボルトの方がサイズ感が大きい。- [ヤマハ ボルト] フロント19インチ/リア16インチ
- [ストリート750] フロント17インチ/リア15インチ
- [スポーツスター] フロント19インチ/リア16インチ
カッコいいオートバイの定義として“人もバイクもヒップラインが大事”と言っているのですが、ここも印象が異なります。ストリート750に関しては、良く言えば前衛的ですが、ハーレーダビッドソンというブランドに求めるもの次第では「?」と言われてしまいかねない仕上がり。一方のボルトは、手堅いクラシックスタイルであるものの、もう少しコンパクトにできたのでは?とも。
フューエルタンクも大きな違いが。“ストリートシーンのためのモデル”というこの2台を見比べると、ストリート750のタンクは大きすぎます。ガソリンスタンド間の距離が長い北海道のようなところに行くわけではないので、大きさよりもコンパクトなシルエットを重視すべき。その点で言えば、ボルトのデザインは理にかなっているのです。
驚いたのが、レバーの違い。「ハーレーダビッドソンと言えば、太いレバー&グリップ」と言われているのですが、ここではボルトが太く、ストリート750が細いという真逆の結果に。ボルトがハーレーを意識して作ったところが浮き彫りになった部位と言えます。何もこんなところを真似しなくても……。
どちらも賛否あるかと思いますが、新しいマーケットの開拓として投じられた両者のデザイン性について優劣をつけるのは非常に難しいところ。ただ、ストリート750に関しては伝統のスタイルからの乖離が大きすぎて、疑問を抱かずにはいられないところ。
それでは、両者を乗り比べたインプレッションの感想を次ページにて。
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