社会ニュース/よくわかる時事問題

カジノ合法化の鍵を握るギャンブルの定義問題(2ページ目)

政府が掲げる観光立国の柱「IR(統合型リゾート)」。その中核となるカジノの合法化が足踏み状態となっている。2020年東京五輪に間に合わせるため、政府も急ピッチで作業を進めているが、大きな懸案が残されている。その一つがパチンコの透明化だ。貸し玉総額20兆円、売上げ3兆6,000億円というパチンコ事業だが、日本ではギャンブルではないことになっており、このままカジノだけ合法化すれば矛盾が生じることになるからだ。

松井 政就

執筆者:松井 政就

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ギャンブル行政上の矛盾

もしこの状況のままカジノを合法化するとなれば、同じ民間業者であるカジノとパチンコの間に換金における矛盾が生じる。パチンコは事実上の日本最大のギャンブルである。マーケットも大きく、関連する事業の裾野も広い。矛盾が問題となった場合、社会に与える影響は少なくない。

ギャンブル行政の一貫性を保つためにもこの問題は避けて通れないが、ここに一つ厄介な問題が存在する。

パチンコの換金問題は、パチンコが事実上のギャンブルであることによって生じる問題であるのだから、まずはパチンコをギャンブルであると認めない限り、作業が全く行えない。

だが国はパチンコはギャンブルではないとしているのだ。


「パチンコはギャンブルではない説」は
「論点のすり替え」によって生まれた

現在、パチンコがギャンブルではないとされているのは、出玉が「店内で換金されていない」という点が理由だ。

しかしギャンブルか否かの判断は本来、お金を賭けてそれを増やそうとするという「行為」と、実際に換金できるという「結果」で見るべきである。

たとえばJRA(日本中央競馬会)が馬券を売るだけで、払い戻しは別の企業が行ったとしても、増やす目的でお金を賭ける行為であるのだから競馬はギャンブルであり、どこで払い戻すかはその本質とは関係ない。

つまり、「パチンコがギャンブルではない」という主張を聞いた際に、ノドの奥に何かひっかかったような気持ちになるのは、「お金を賭けて増やそうとする行為」と「最終的に換金できるという結果」ではなく「どこで換金するか」という、ギャンブルの本質とは無関係の点に「論点」がすり替えられているからである。

カジノは基本的に世界共通のルールに基づいて行われるゲームである。よって法律の仕組みも運用も世界水準に近いものでなければならない。

本気でカジノ合法化を進めるためには、もはやこうした論点のすり替えはやめ、行為と結果で管理するよう、ギャンブル行政の一貫性を確保することが必要といえる。
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