「しない」ほうが常に優位
2人で納得して決断って公平?
ちょっと考えてみてください。「何かをする・しない」を、2人で協議して決断しようとするとき、一方が「する」を選び、一方が「しない」を選択したとします。
新しいパソコンを買う・買わない、引っ越しをする・しない、セックスをする・しない……いろいろなシチュエーションがありますね。
2人の意見の重みは平等です。だとするといつまでも決断ができません。ということは実質的に「しない」の選択が実行され続けることになります。この場合、結果的に「しない」を選んでいるほうが、実は主導権を握っているのです。
これはジレンマです。自分の選択を主張することは自由です。しかしその選択に相手を従わせることは許されません。ですから、「する・しない」の決断をする際、「しない」を選んでいるほうは、自分が優位な立場にあることを自覚して、相手以上に真摯に議論に向き合い、相手の意見を理解するように努めるべきです。それではじめて対等な立場ということになります。
説得するより全権委譲
しかし、「しない」を選択している人が、真摯に議論に向き合ってくれない場合、「したい」ほうはどう対処したらいいでしょう。一生懸命プレゼンテーションするというのは一つの方法です。新しいパソコンが発売されて、古いものを買い換えようなんてときには、いかに新製品が優れているのか、それを買うことによって自分たちの生活にどんな変化が期待できるのかを訴えることで、相手を説得できるかもしれません。
でも、「セックスをする・しない」みたいな理屈の入り込む余地のないことに関しては、「説得」はできません。とってつけた理屈で迫れば迫るほど、相手もガードを固めるでしょう。
そういうときにおすすめなのは、判断を完全に委ねることです。「あなたが決める。自分は従う」と宣言するのです。相手に、「自分が実権を握っている」ことを自覚させるのです。
こうすることではじめて相手は自分がもっている力に気づきます。いつの間にか自分の意見に相手を従わせていたことに気づきます。変化が起こるとしたら、それからです。必ずしも変化が起こるとは限らないのですが、どうせ説得してもだめなのですから。
理解されれば勇気が湧く
もうひとつ、日ごろから心がけたいことがあります。意見が食い違うときに、「そんなのおかしい」と一刀両断してしまうのではなく、「どうしてそう思うの?」「なんでそう考えたの?」と相手の気持ちや考えを聞く癖をつけることです。「なるほど、そういうことだったのね」などとフィードバックをすれば、なおよしです。
人は、自分が理解されているという安心感があってこそ、相手のことを理解してあげようと思う心の余裕が生まれます。ちょっとだけ自分の考えを変えてみよう思う勇気が湧いてくるものです。
相手に変わってほしいとき、正論をぶつけるよりも、相手のことを理解してあげるほうが結局は早いのです。普段から「あなたのことを理解しているよ」というメッセージを伝えることで、こちらのことも理解してもらいやすくなるのです。夫婦でお互いにそれができるようになると、それぞれ意見は違ってもお互いを尊重できる夫婦として、進化していくことができます。