性交時の勃起を支えるのは「海綿体の内圧」
EDは「性交時に必要な勃起が得られないため、あるいは十分な勃起が維持できないため、満足な性交を行えない状態」をいいます。それを治すED治療薬は、陰茎が勃起しようとするのを助け、勃起を持続させる薬です。では、肝心の「勃起」はどのように起きるのでしょうか。ここでおさらいしておきましょう。
始まりは、脳が性的に興奮することです。視覚や聴覚、嗅覚、触覚、空想などさまざまな要素が引き金になります。これらのいくつかが組み合わさることもあります。脳の興奮は脊髄を経て、陰茎の勃起神経に伝えられます。
興奮を伝えられた勃起神経は、先端部から一酸化窒素(NO)を放出し、陰茎海綿体の平滑筋細胞内で、サイクリックグアノシン1リン酸(cGMP)という神経伝達物質をつくります。cGMPは陰茎動脈を広げ、平滑筋を緩めることで、陰茎海綿体に大量の血液が流れ込むようにします。こうして勃起が起こります。
陰茎海綿体内部の圧力は、勃起していない時には10mmHgほどですが、勃起時には60~80mmHg以上になるといわれています。「性交時に必要な勃起」は、この内圧が支えているのです。
勃起を妨げる酵素の存在
NOの産生を助け、PDE-5を抑え込んで勃起を助けるのがED治療薬の役目
cGMPが効かなくなると平滑筋が縮み、血液が流入しにくくなります。このため、勃起が起こらなくなるか、起こってもすぐに萎えてしまう現象が起こります。これがEDです。
ED治療薬は、このやっかいなPDE-5のはたらきを妨げる作用をもっています。そのためこれらの薬剤はPDE-5阻害剤とも呼ばれています。
ほとんどのEDは、PDE-5の分泌量が多いか、あるいはcGMPの生産量が少ないことが原因と考えられており、PDE-5の働きを阻害(邪魔する)することが勃起の持続につながるのです。
ED治療薬は飲み薬ですから、全身を巡ります。それなのになぜ、陰茎の血管だけに効くのでしょうか。
実は、PDEにはいくつかの異なるタイプがあり、例えば、PDE-3は心臓の冠動脈にあります。ED治療薬はこのPDE-3にもはたらきますが、それよりもPDE-5に「選択的に」取り付き、そのはたらきを強く抑え込むのです。
自然な勃起を招くには性的興奮が必要
ED治療薬をうまくはたらかせるためにはパートナーの協力が何より
ED治療薬はあくまでも、陰茎が勃起しようとするのを助け、持続させるために用いる薬ですから、ただ飲むだけで勃起が起こるわけではありません。いくらED治療薬を飲んでも、きっかけとなる性的な興奮がなければ勃起は起こらないのです。
考えてみると「性的に興奮していなければ勃起しない」「性的興奮を感じた場合だけ勃起する」というED治療薬の効き方は、時間を気にせず自然な状態でパートナーとの性行為を楽しむのに好都合ともいえます。
五感を総動員してパートナーに性的な魅力を感じたり、パートナーからほどよい性的刺激を受けたりして脳が興奮すれば、ED治療薬はうまくはたらいてくれるはずです。
持病によっては処方されないことも
勃起が起こるメカニズムやED治療薬が効く仕組みをおさらいすると、さまざまな要因が関わって導かれる「勃起の決め手」になるのはcGMP、そしてそれを邪魔するのがPDE-5、そのPDE-5のはたらきを抑え込むのがED治療薬ということになります。ED治療薬はED治療の第一選択とされるほど安全で信頼性の高い薬です。しかし、それを用いることによるセックスは肉体的な負荷を伴うので、心臓や血管に障害がある人には処方されないことがあります。
極端な高血圧や低血圧の人、重い肝臓障害や網膜色素変性症の人には処方されません。自分が使えるかどうか不安な場合には、ED治療薬を処方している病医院や、ED啓発サイトで検索したクリニックなどで相談するとよいでしょう。
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