ステレオ、音の情報量と「音楽」の関係は?
実際、ある都内の家電量販店のオーディオルームで、いま話題のハイレゾ音源とCDの聞き比べのイベントに居合わせたことがあります。音源は宇多田ヒカルの「First Love」でしたが、恥ずかしながら私には違いが分かりませんでした。ステレオ録音は20世紀中ごろに臨場感や立体感を出すために開発されたもので、テクノロジーの発達とともにレコーディングも凝ったミックスが行われるようになりました。
でも、いまはスマホでラクに音楽を楽しめる時代。圧縮された情報のmp3音源で十分で、ヘッドフォンの左右も気にしない若い世代も多いとききます。「それで、いいじゃん」って私は思います。
「これからのポップスは全部モノラルでオッケー!」ぐらいでいいのでは。逆に昔のドラムセットのタムタム(小さなタイコ)が右から左にパンされる(流れる)ようなミックスを聞くと、懐かしいけれど、ちょっぴり恥ずかしい気持ちになったり……。
そして完成した無駄なくらいに定位がはっきりしたスピーカーで、ラジオのネット配信放送を聴いていたら、「ん?」という曲が流れていました。
その女性ヴォーカルのJ-POP? 歌謡曲? は、左チャンネルからしかドラムセットの音が聞こえてこない。キック(バスドラム)も含めて左だけ。「あ、やっぱり中華アンプだめか~!」と思ったら、そういうミックスなのでした。
あわてて曲名をメモ。chayという人の「あなたに恋をしてみました」という楽曲らしい。
最近の音楽は定位感がないと思っていたのですが、今でもエンジニアさんたちは「攻めの実験」をしてるんだなぁ、と感心しました。でも、この曲もコンビ二で聴けばモノラルになってしまうのですが……。
などということを、今回の経験で個人的に考えたのでした。
最後に……。インテリアと音楽の関係
こじつけ的にインテリアと音楽のかかわりについて少し。空間と音楽といえば、エリック・サティの「家具の音楽」が有名ですね。単調にも思えるサティの音楽は、後の環境音楽=アンビエント系のブライアン・イーノなどにも影響を与えたといわれています。ある意味、サティがBGMという概念の発明者かもしれません。
そして、邦題ですがサティの曲に「県知事の私室の壁紙」という作品があります。これは、有名なピアノ独奏の「ジムノペディ」とは違って金管楽器なども入った複数の楽器によるアンサンブル曲。タイトルからの刷り込みもあると思いますが、聴くたびにヨーロッパの壁紙やさまざまな調度品などがイメージとして浮かんできます。
近年、飲食店などのBGMには渋いモダンジャズがよく流れています。どういう方がチョイスしているのか分かりませんが、ラーメン屋さんでフリー系のオーネット・コールマンや、なぜか復帰後の1980年代エレクトリック期のマイルス・デイビスが流れていて思わず箸がとまってしまったことも……。
もし、ご家庭でホームパーティなどを催すことがあって、BGMをかけるときなどは、細心の注意が必要かもしれませんね。参加者の音楽の傾向などを把握しておくらいの準備が必要。
音楽は相当、好き嫌いが分かれる、じつはデリケートなカルチャーなので、BGMの選択のミスで場が気まずくなった経験が私には幾度かあります……。
でも、音楽は空間の雰囲気を変えるパワーがあるし、会話も弾むし、時には身体が動き出してダンスに発展することなどは、みなさん経験しているはず。
そして、おしゃれなインテリアと最新オーディオ機器のデザインは、あまり相性がよくないと感じている人もいるのでは? デザイン優先ならば、骨董品的な真空管アンプや前面が綾織(ツイード)などのクラシカルなスピーカーを探してみるのもアリですね。
いまは価値のない1970年ころの家具調のナショナル製(現パナソニック)のスピーカー。チェーンのリサイクルショップでセットで200円。木に見えますが樹脂性で裏面はブラウン管テレビに使われていたハードボード。こんな「応接間感」あふれるデザインは大好き。現在、二束三文で粗大ごみ扱いですが、このタイプ見つけたら、またゲットしたい。音にエッジはないですがモノラルで鳴らしたいです。
今回のように、おもに卓上で使うPC用オーディオならば、本当は中華アンプの超ハイパワーはいりません。日本の老舗オーディオメーカーFOSTEXの5W×2=10WのAP05が実勢価格4千円程度で売られているので、じつはオススメだったりします。
音楽は広い意味で魅力的なデザイン、そしてアート。いろいろな環境・空間でインテリアの一部として、自由にサウンドや旋律を楽しみましょう。