保健師/保健師の学校について

徳島大学医学部保健学科 看護のグローバル化を実践 

保健師になるための学校を個別に紹介します。第13回目は徳島県徳島市の徳島大学です。保健師教育では県内で最も歴史があり、英語教育にも力を入れています。

西内 義雄

執筆者:西内 義雄

保健師ガイド

保健師コースは選択制ながら人数制限なし

徳島大学の公式な創立年は1949年。しかし、その前身をたどると1874年(明治7年)に創設された徳島師範期成学校までさかのぼる国立大学です。医学部のキャンパスはJR徳島線蔵本駅から徒歩5分の蔵本地区に、歯学部、薬学部、病院と共にあります。ほかに常三島地区に総合科学部と工学部、新蔵地区に事務局、というように、徳島市内に施設が分散されて配置されています。

大学全体の特長としてまずあげられるのは、理系の学部が充実していることです。青色LEDでノーベル賞を受賞した中村修二氏も同大学工学部の卒業生なので、理系、とくに工学部の知名度はとても高いようです。

一方の保健学科は平成13年に開設。保健師資格の取得できる看護学専攻のほか、放射線技術科学専攻、検査技術科学専攻の3専攻で構成されています。

保健師コースは他大学と同様、選択制を採用していますが、人数制限は設けていません。一定の科目取得条件さえクリアすれば、誰でも資格取得のためのコースに進むことができるわけです。

好事例の多い自治体での実習

保健師コースの実習は、市町村なら県内23の自治体のうち、15ヶ所ほどに振り分け実施されます。なかでも県内で保健分野の先駆的な取り組みをしていると評されている神山町、上勝町、那賀町には頻繁に足を運ぶことがあるようで、

「実習に行った学生にとっても、その話を聞いた学生にとっても、よい経験になっている」

とは、保健師教育担当の岩本里織教授。

「本学の卒業生は県内各地で活躍していますので、実習先ともよい連携ができていますし、そこにいる現役の保健師の方々から、後輩たちへの熱い指導も受けることができます」(岡久玲子准教授)

との話もありました。

県の実習は県内6ヶ所の保健所で行います。そして、養護教諭課程があることから、保健師課程では必修となっていませんが、保健師と養護教諭の資格取得もできる体制を組んでいるので、希望者は養護実習も受けることができます。

産業保健の実習は、これまで一部保健所実習のなかに組み込んでいましたが、平成27年度の公衆衛生看護学実習から実習単位が5単位に増えることに伴い、2か所の地元企業での実習を予定しています。

英語教育と留学制度も充実

保健学科全体の特長としては、大学病院との連携が密接なことがあげられます。とくに蔵本キャンパスは前述のように、医学部、歯学部、薬学部が揃い、それぞれの学部の学生が同じ授業を受けることがあります。また、1、2年次には別のキャンパスにある工学部や総合科学部との合同授業もあるため、積極的に動けば動くほど、人脈も広げやすい環境にあるわけです。社会に出るとなかなかできないことなので、こうしたチャンスはぜひ有効利用してもらいたいものですね。

患者さんを模したシミュレーション人形や、診察、検査のためのモデルなど学習機器が揃っている臨床技能学習施設(スキルス・ラボ)が充実しているのも徳島大学の特長です。これは看護教育全般に役立つもので、大学病院の看護師も実際に使っているものを学生のうちから触れることで、先進的かつ実践的な看護技術の習得に役立っています。

また、看護のグローバル化を意識した取り組みもいくつかあり、一部の選択科目では英語での看護教育も始まっています。国際交流においては、希望すれば医学部間協定校であるヘルシンキメトロポリア応用科学大学(フィンランド)への、40日間の短期留学制度(医学部からの奨学金などの補助あり)も用意されているとか。ここ数年は、毎年2から5人の学生が留学しています。さらに、アメリカやフィリピンの大学とも連携協定を結んでおり、今後は留学先も増える予定です。

担当教員からのメッセージ

徳島大学はこんなところ、私はこんな保健師を育てたい、など、地域看護学分野の先生たちからのメッセージをご紹介します。

左から松下恭子准教授、岩本里織教授、岡久玲子准教授、多田美由貴助教

左から松下恭子准教授、岩本里織教授、岡久玲子准教授、多田美由貴助教

「保健師はほとんどが公務員なので、採用試験の際には型通りの答えを求められるケースが多いのですが、みんなと同じ方向を向いてありきたりのことだけを考えるのではなく、様々な視点からの見方ができる人になってほしいです」(松下恭子准教授)

「実習に行くと、住民さんの力がすごいなと思うことがよくあります。これは地域の保健師がうまく住民の力を引き出しているからで、先輩保健師の技を体験的に学んでほしいと思います。私たちも保健師の仕事のイメージがよく掴めるよう、講義・演習・実習を連動させながら、役割や魅力を伝えていこうと思います」(岡久玲子准教授)

「ものごとを新しい視点で見れるよう、新しいことにチャレンジしていけるような保健師になってほしいです。保健師活動は地域の人との出会い、関わりから始まりますので、大学生活のなかで人と接する力をつけ、いろいろな人と関わるなかでコミュニケーション能力をつけていってください。徳島は人の温かみがとてもよく分かるところですので、ぜひ来てください」(多田美由貴助教)

「私は生存権を守る保健師活動を研究テーマにしています。保健師は住民の健康に責任を持って活動するものなので、まずはそこをちゃんと自覚できる人になってください。それから、徳島大学はとてもアットホームな大学です。就職活動支援もとても手厚くサポートしていますので、安心して飛び込んできてください」(岩本里織教授)

(大学データ)
徳島大学医学部保健学科看護学専攻地域・精神看護学講座:岩本里織教授/岡久玲子准教授/松下恭子准教授/多田美由貴助教
定員:80人
保健師コース定員:希望者全員。ただし、保健師教育課程の履修科目を選択し単位を取得できた者
保健師コース最終選択確定時期:4年生進級前

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます