国際化が進むニセコに和風リゾート誕生
北国に冬が訪れると、道内屈指のビッグゲレンデを持つニセコには、パウダースノーを求めるスキーヤー、スノーボーダーたちが首都圏を始め海外からもたくさん押し寄せてきます。中でもオーストラリアからの観光客は急増しており、「リトル・シドニー」と呼ばれるヒラフ地区の中心街はスキー・スノボ目的の外国人観光客のみならず彼らをターゲットとしたオーストラリアのツアー会社や外資系スキー用品店も軒を連ねています。そんな国際化が進むニセコの奥座敷、昆布温泉に「新しい和風リゾートが誕生」というニュースを聞いたのは、2013年夏のことでした。そこは、阿寒湖を拠点としながら支笏湖、定山渓とおしゃれで斬新なホテルを次々にオープンさせ、地元の話題を集めている鶴雅グループの「鶴雅別荘・杢の抄(もくんしょう)」。
好奇心旺盛で新しいモノ大好きの筆者、さっそく宿泊予約をしたのですが、何せ超・話題のこのホテル、オープン時点ですでに半年先まで予約満杯という状態で泣く泣く断念。一年半を経た今回、ようやくこちらの部屋を確保することができ、念願のリゾートホテルを目指して雪に閉ざされたニセコに向かいました。
昆布温泉にオープンした杢の抄
おしゃれな大人の隠れ家でリゾート気分
「ここは本当に日本か?」と見まごうばかりに英語の看板が立ち並び、カラフルなスキーウエアに身を包んだ外国人観光客が闊歩するヒラフの街中を抜け、さらに東に走ること数十分。その雰囲気は一点し、清流に囲まれた閑静な森にたたずむ「鶴雅別荘・杢の抄」に到着しました。玄関を一歩入ると、そこにはモダンでありながらも懐かしい不思議な空間が。建物や内部のインテリアも黒と茶を基調とする落ち着いたカラーでまとめられており、和風の中に「アイヌ文様」がデザインとして効果的に取り入れられています。
アートな感覚あふれるロビー
「こちらの暖炉では、夕食後に焼マシュマロを召し上がっていただくことができます。どうぞごゆっくりお楽しみください」
係の方の言葉を聞きながら「マシュマロのような甘い夜」のワンシーンを想像し、早くもワクワク。「大人の隠れ家」特有のリッチなリゾート気分で満たされていきます。
ラウンジで和菓子をいただきながらチェックイン
広いツインルームにはマッサージチェアも
名湯、ニセコ昆布温泉で雪見風呂
昔アイヌの人たちが道しるべとして木に昆布を巻きつけたという故事来歴からその名を得た、あるいはアイヌ語の「ドコンボ・ヌプリ」(小さなこぶ山)が訛ってコンブとなったとも言われる昆布温泉。ほんのり緑がかったお湯の色と重曹を含むヌルヌルとした泉質は、その名前の通り昆布を溶かしたお湯のようにも見えます。昆布を溶かしたような温泉
う~ん、最高! 足先から首まで、ジンジンと痺れるように熱気が伝わっていきます。顔や頭に降りかかる雪の冷たさが、これまた良い気分。
上を見上げれば降りしきる雪。そして眼前には、雪の壁。周囲を無垢な白に囲まれて無重力の湯の中で浮遊している……あたかも母体の羊水の中に浮かぶ胎児に戻ったような、不思議な、しかし心地よい感覚に浸りきり、しばし時間がたつのも忘れてしまいました。
湯船の眼前は雪の壁