ラグビー

帝京大学が6連覇達成!大学選手権総括(2ページ目)

大学ラグビーの日本一を決する第51回全国大学選手権大会は1月10日に決勝が行われ、帝京大学が筑波大学を50-7で下し、優勝を果たしました。決勝史上最多得点という記録的な勝利で連覇を「6」に伸ばし、帝京1強時代をさらに強く印象づけました。ここでは帝京大学の強さの理由を中心に、各校の戦いぶりや大会全体の感想、課題などについてお話ししていきます。

中竹 竜二

執筆者:中竹 竜二

ラグビーガイド

足し算型から掛け算型のラグビーに、まったく隙がなかった

また、帝京大学は当然個々の選手も強いのですが、試合中に選手同士が話し合っている表情や雰囲気を見ても、リーダーを中心に非常によくまとまっており、質の高いトークをしていることが垣間見えます。

たとえばミスが起こった時、その選手に対してリーダーがどういう声かけをしているかによって、チーム内の信頼関係が浮かび上がります。そうしたところまで観察しながら試合を見ると、明らかにその見本となっているのが帝京大学であり、強さの理由がわかるはずです。

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決勝でも再三FW、BK一体となった華麗なアタックを披露した。写真はFB森谷圭介 (C)JRFU 2015, photo by H.Nagaoka

具体的なパフォーマンスを見ても、以前はフィジカルを前面に押し出したシンプルな「足し算型」の戦い方でしたが、最近はスピードとスキルも駆使した「掛け算型」、さらには「方程式型」ともいうべきラグビーになっています。見ていてもボールが動くので楽しいですし、プレーに余裕があるので思い切ってチャレンジしている。難しいことでもやってみようという意思が、明確に現れるようになってきたと感じます。

みんながやることを理解し、一人ひとりのチャレンジを認めているからこそ、多くのビッグプレーが生まれるわけです。

一方、これまでの看板だったスクラムやラインアウトといったセットプレーが今年も圧倒的に強かったかというと、そうではありませんでした。実はシーズン中、何度かスクラムを押されたり、ラインアウトを崩されたりすることがあった。しかしたとえセットプレーが崩れても、BKがランプレーでスコアを重ねたり、ディフェンスで相手ボールを奪い返すことで、まるでそれがなかったかのようにカバーしていました。

特定のパートが圧倒的に強かったというより、ゲームや対戦相手によってその都度活躍する選手や圧倒するポイントが変わり、強みと弱みのバランスをとりながら順調に成長していった。その結果、最終的にはまったく隙のないチームになっていました。シーズン当初と選手権終盤のチーム状態を比較して、もっとも成長したのが帝京大学だったと感じます。


見事にピークを合わせた帝京大、余力の差が大きな差に

逆に他のチームは、最初はよかったけれどピーキングがうまくいかず、ターゲットを絞りきれないまま終わる--というケースが多くありました。試合を重ねるごとにケガ人が増え、疲労も蓄積していって、結果として開幕時より弱くなったのでは、と感じるチームも少なくなかった。そこが帝京大学と他校の大きな違いでした。

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2年ぶりの決勝進出を果たした筑波大。シーズン終盤に力を伸ばした (C)JRFU 2015, photo by H.Nagaoka

準優勝の筑波大学や、その筑波大学と準決勝で死闘を演じた東海大学も、シーズン終盤になって力を伸ばしていったチームだと言えます。東海大学はディフェンスを中心に強化してきて、最終的にとても厳しいラグビーをできるようになりました。

筑波大学も終盤になってケガ人が続々と復帰し、ブレイクダウンの激しさとトランジションの早さを武器に勝ち上がった。ただ、大学選手権ではさすがに余力を残しながら戦うことはできず、すべてに全力で臨まなければならなかったため、最後は消耗が激しかったように感じます。

たとえば筑波大学は準決勝で見事な逆転勝ちを収めましたが、1週後の決勝の間でもうひと伸びできたかと考えると、疲れやケガなどもあって若干停滞した印象がありました。東海大学もセカンドステージの最終戦で早稲田大学をほぼ完璧に封じましたが、関東リーグ戦から大学選手権に入る時の伸び率と、選手権セカンドステージから準決勝に上がる時の伸び率を比べると、後者はやや小さかった。

一杯いっぱいで戦っていく中で必死に伸びていったチームと、照準をピークにきっちりと合わせ、余力を残しつつ多くの可能性を探りながら勝ち上がった帝京大学とで、最後に大きな差がついてしまったわけです。

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