この記事をご覧の皆さま、初めまして。ストリートダンサー/インストラクターの三宅正と申します。今回は、ストリートダンスを習う・踊る上でぜひ読んでおいて頂きたい、こちらの書籍をご紹介します。

 ※「お勧め書籍」シリーズでは、私がこれまでに収集してきた書籍やDVDなどの中から、ストリートダンスの歴史や文化を知る上で特に参考になるものを厳選してご紹介していきます。


お勧めする理由

この本は、日本人初のプロのストリートダンスチーム「ネッシーギャング」の一員であり、イラストレータ―・DJ・そして音楽プロモーターや店舗プロデューサーとしての肩書きも持つ、江守 藹(えもりあい)氏による自伝的な書籍です。

内容は主として黒人音楽が日本に入ってくる歴史にフォーカスして書かれていますが、前述の通り江守氏が日本人初のプロダンスチームの一員であるということもあり、「エレクトリックブーガルーズ(The Electric Boogaloos)」や「ロックステディクルー(Rock Steady Crew)」といったアメリカのストリートダンスのオリジネイターの存在や、番組「SOUL TRAIN」の生い立ち、また現在日本で「大御所」とされる「Be Bop Crew」のメンバーがまだ若かった頃の貴重なエピソードなども記されています。

1948年生まれ(66歳:2015年1月現在)の江守氏が、日本に居ながら(時にはアメリカに渡って)アメリカと日本の両方を見つめ、実際にその人生において体験した黒人文化・音楽との関わりを記したこの書籍は、文章化されている数少ない、そして非常に貴重な「日本のストリートダンスの歴史本」と言えます。

ストリートダンスにまつわる、今では当たり前となっている様々な事の全てが、まだアメリカでも存在しなかった時代……。そこから今日に至るまでの“歴史の生き証人”とも呼べる江守氏ご自身の文章によるこの書籍は、正に必見です。


あらすじ

1960年代半ば、当時高校生だった江守氏は友人の誘いでダンスパーティーに参加する。同級生の多くがビートルズに熱狂している中、父親に頼み込んで買ってもらったというステレオでジャズ音楽(黒人音楽)のレコード鑑賞に傾倒していた江守氏は、一気にその世界に惹かれていく。

時を同じくしてアメリカではリズム&ブルースの時代が幕を開ける。そうした時代背景の中、1966年に日本初のディスコ(の前身)ともいえる店「ジ・アザー」がオープン。同様の店舗が続々と出来ていく中で、店に通っては音楽を聞き、フロアで踊り、様々な人と出会う日々を過ごしながら、もともと美術志望だった江守氏はイラストレーターとしての道を志すようになる。

時は流れ1970年代。それまでの時期、ディスコの内装イラストの仕事を経て店舗プロデュースを手掛けたり、雑誌の黒人音楽特集の企画・執筆を行うなどして活動の幅を広げてきた江守氏は、ディスコブームという大きな波と共に、ソウル・ミュージックの日本版レコードジャケットのイラストを数多く手掛けることとなる(ソウル・イラストレータ―という肩書きのパイオニアとなる)。またこの頃、自ら全てを企画した本格的な黒人音楽店舗=ソウル・ディスコ、「アフロレイキ」をオープンさせ、大きな話題となる。

そんな最中、江守氏のもとに新たなオファーが入る。それはクール&ザ・ギャング(Kool & the Gang)の来日のプロモーションという、大きな仕事であった。その一環として、江守氏は仲間と共にコンサートのバックダンサーとして踊ることになる。こうして、日本発のプロ・ダンスチーム「ネッシーギャング」は誕生した。

その後、ネッシーギャング結成よりも少し前に設立された「全国ディスコ協会(江守氏も関与)」の企画などにより、全国でダンスコンテストが多数開催されるようになり、ストリートダンスの創成期が訪れるのだった・・


最後に

私が所属しているダンススタジオで、江守氏は今も現役のダンス講師としてレッスンを持たれています。ある年のスタジオ発表会のインストラクターナンバー(発表会の最後にある、講師のみによる特別演目)で、スタジオのインストラクター陣と共に江守氏と同じステージに立たせて頂いた際、普段の温厚なお人柄からは想像のできない強烈なオーラと“黒人そのもの”の動きをステージ上で文字通り「体感」し、圧倒されたのを今でも強く覚えています。

その江守氏が、後に続く世代に向けて熱い想いをこめて世に出した本書。繰り返しになりますが、ぜひ手に取って読んでみて頂けたらと思います。


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