株式戦略マル秘レポート/戸松信博の「海外投資、注目銘柄はここ!」

最新米国企業決算に見る原油価格暴落の痕跡

米国では2014年第4四半期(10-12月期)の企業決算発表が行われていますが、まだ原油価格暴落の影響はそれほど出ていません。しかし、2今後、その影響は大きく出てくるものと思われます。

戸松 信博

執筆者:戸松 信博

外国株・中国株ガイド

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最新米国企業決算に見る原油価格暴落の痕跡

原油価格のボラティリティ・インデックス(上)と石油サービスセクターの株価推移(下)

原油価格のボラティリティ・インデックス(上)と石油サービスセクターの株価推移(下)

上段のチャートは原油価格のボラティリティ・インデックスです。この指数が算出を開始された2008年後半より週足で表示しています。株価のボラティリティを表す指数としては、米S&P500指数のオプション価格を元に計算されるVIX指数、別名「恐怖指数」が有名ですが、それの「原油版」となるものです。算出開始以来、最も高いボラティリティ値を記録したのは、原油価格が145ドルの最高値から33ドルにまで僅か半年で急落した2008年の金融危機の時でした。それに比べると、原油価格が高値から6割近く下落した現在のボラティリティは、思ったほどまだ高くないかもしれません。

下段のチャートは米国に上場する代表的な石油サービス業種の株価をまとめた指数です。こちらは上のボラティリティと正反対に動いており、丁度株価とVIX指数のような関係にあります。そして同指数を構成する最大の企業が、時価総額10兆円を超える石油サービス業最大手シュルンベルジェ社(SLB)であり、同社の株価は石油サービス業種株指数と同じような推移となっています。

2014年10-12月期は原油暴落の影響なし

米国の石油サービス企業の2014年第4四半期の業績には原油価格暴落の影響はまだ表れていない。しかし、今後大きな影響を与えてくるのはまず間違いなさそう・・

米国の石油サービス企業の2014年第4四半期の業績には原油価格暴落の影響はまだ表れていない。しかし、今後大きな影響を与えてくるのはまず間違いなさそう・・

原油価格が急落したのは2014年終盤の事です。そして現在米国では、世界の先陣を切って2014年第4四半期(10-12月期)の企業決算発表が行われており、原油の暴落が関連企業にどのような影響を与えているかに注目されるところです。シュルンベルジェの第4四半期決算は2015年1月15日に発表され、その内容は思ったほど悪くなく、翌1月16日の同社株価は前日のほぼ昨年来の安値水準から+6.1%も大幅上昇したのでした。

ただ、この反発を見て石油株の下落は底を打ったと見るのは時期尚早と思います。これから本格的に同社の業績は悪くなろうとしている段階です。同社は人員削減や設備投資、プロジェクトの縮小、キャンセルなどの準備を行っていると発表しました。当然業界内の他の中小企業も同様の傾向となって行くはずです。
シュルンベルジェの業績推移。2014年10-12月期は原油価格暴落の影響はまだ出ていない

シュルンベルジェの業績推移。2014年10-12月期は原油価格暴落の影響はまだ出ていない

シュルンベルジェ社の前期最終3ヶ月間の売上高は、前年同期比6%増となる126億ドルで、市場予想平均より僅か2,600万ドル下回った程度でした。そして営業利益、EBITDA利益、調整後最終純利益ともそれぞれ前年より+6~15%の増益となり、市場予想からは誤差の範囲で上下した程度でした。最も重要な調整後最終一株利益(EPS)については前年比+11.1%増益の1.50ドルで、市場予想平均の1.45ドルを大きく上回り、四半期配当額も+25%の増配との事です。同時に大きく下がった自社株に対し、11億ドルの自社株買いを10-12月に実施したことも発表しました。上の四半期毎の業績グラフを見ても、これまでと変わらぬペースで成長が続いている模様です。
地域別売上高の推移を見ても、各地域で満遍なく成長が続いている

地域別売上高の推移を見ても、各地域で満遍なく成長が続いている

地域別売上高の推移を見ても、各地域で満遍なく成長が続いている模様です。北米地域では31.5%の増収と35.4%の増益(税引き前利益)を達成し、中東地域は60.3%の増益、欧州・アフリカ・CIS(旧ソ連圏)地域も34.2%の増益、中南米は15.6%の増益でした。また地域別でなく、油田サービス内容の事業項目別で見ても堅調でした。

同社は全世界に10万人を超える従業員を要し、主な油田地域を全てカバーします。そして年間5兆円を超える売上高を持ちます。事業地域は分散されており、価格競争力もあるので、原油価格の急落した2014年10-12月においても、契約通り仕事をこなしてきたものと思われます。各プロジェクトはその数ヶ月から半年以上前に契約で決まっていたもので、決算に殆ど影響なかったという事でしょう。中国で同社が出資する小さな同業他社からは、2014年の決算が2割の売上減と赤字転落になるとの発表もありましたが、シュルンベルジェ社の強固な事業基盤をぐらつかせる事はなかった模様です。

2015年は業績が大幅に落ち込み、株価は更なる下落があっても不思議ではない

しかし問題は、2015年の業績が大幅に落ち込むだろうと思われることです。同社の顧客であるBPやApacheなどの石油会社はすでに人員削減を発表しています。他の大手も設備投資の大幅削減や、掘削プロジェクトのキャンセルを発表し、中小においては今年のリグの新設を一切行わないなどと言う所もでてきています。そしてシュルンベルジェ社自身も9,000名の人員削減と、油田サービスに対する設備投資を昨年の40億ドルから30億ドルにカットすると発表しました。2015年からいよいよ本格的に仕事量が減ることは、もはや確実な模様です。

2009年にも原油価格急落を受けて同社売上は16.7%下がり、利益は41%も激減しました。同社にとって減収減益など、過去20年においても、原油価格の暴落した際の数回しかない珍しいことですが、2015年には、それが再び起こりそうです。もちろん、それを先に織り込んで株価は下落し続けてきたわけですが、今後予想される利益の減少とPER水準を考えれば、株価は更に下落しても不思議はなさそうです。

参考:グローバルグロースレポート

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