世界では常識!B型肝炎の予防接種
<ユニバーサルワクチネーション導入国 WHO(2012)> 幼児期にB型肝炎ワクチンを3回受ける接種率を色分けしています。青色は90%以上、水色は80~89%、ピンクは50~79%、赤は50%未満、色が塗られてないのは定期接種されていない国です。
国民全員がワクチンを受ける方法を“ユニバーサルワクチネーション”といいます。WHO(世界保健機関)は、1992年、世界中の子どもたちに対して、生まれたらすぐにB型肝炎のワクチンを国の定期接種として接種するように指示しています。世界180か国以上でユニバーサルワクチネーションが取り入れられ、現在では90%以上の国と地域で導入されています。
これに対して、日本では“セレクティブワクチネーション”という、感染リスクが高いB型肝炎ウイルスを保有する母親から生まれる子どもに限定して、ワクチン接種を健康保険の対象として行ってきました。
もちろん、この感染防止事業も一定の効果はあったのですが、近年母子感染以外の感染ルートが増えてきていることが明らかになり、母子感染予防だけでは対策が不十分であることが問題となってきています。
都市部を中心にB型肝炎が増加!?
B型肝炎の感染源は、B型肝炎ウイルスを保有している感染者の血液あるいは血液の混入した体液です。厚生労働省の研究班の調査結果では、「日常生活で感染する可能性は低いものの、唾液や汗などの体液から感染する可能性が完全には否定できない」ということも報告されています。近年、父子感染や感染経路不明で乳幼児がB型肝炎ウイルスに感染する例が増えてきています。また、都市部を中心に、性行為により感染するジェノタイプAの成人初感染による急性肝炎が増加していることも問題となっています。
B型肝炎ウイルスのジェノタイプ(遺伝子型)はA~Jまで分類されます。アジアではジェノタイプBとCが多く、欧米ではAとDが多いなど、ジェノタイプの分布には世界的な地域間差、民族差があります。
ジェノタイプB、Cがほとんどを占めている我が国においては、B型肝炎ウイルスの成人初感染では、急性肝炎を起こすものの慢性化することはほとんどないとされてきました。これに対して、近年増加している欧米型のジェノタイプAは、約10%と高率に慢性化するという特徴があります。慢性B型肝炎になると、肝がんや肝硬変に移行するリスクがでてきます。
B型肝炎には“ユニバーサルワクチネーション”が必要
B型肝炎予防にはワクチンが有効です!
日本でも、約150万人のB型肝炎ウイルス持続感染者が存在し、人口の1%以上を占めています。しかも、そのうちの70~80%は感染に気付いていません。肝がんの原因としても、C型肝炎ウイルスに次いで2番目に多いとされています。
B型肝炎ウイルスに感染しても、すべての人が慢性化しウイルスを持続感染した状態になるわけではありません。しかし、いったん慢性肝炎になってしまうと、将来肝がんや肝硬変へ移行するリスクがあります。特に3歳未満の乳児がB型肝炎ウイルスに感染すると、免疫の仕組みが未発達のため、慢性化する危険性はずっと高くなります。
B型肝炎ワクチンは、多くの世界の国々では国民全員が受ける“ユニバーサルワクチネーション”です。我が国でもB型肝炎ワクチンが定期接種になることが期待され、厚生労働省も公費で接種が受けられるよう制度を見直す方針を決めています。