阪神・淡路大震災から20年超、市民の意識は?
今、人口密集地域・東京で震災が発生したら、その被害は過去最大のものになる可能性が
この地震は、戦後初めて人口集中地域で発生した震災であり、およそ90年前の関東大震災と同様に、都市部で発生したがゆえの被害の特徴を持っていました。記憶に新しい東日本大震災とはまったく異なる被害の様相を持っているため、「別種の災害」として認識すべきです。
自分は発生時、東京にいましたが、数日後にバスを乗り継いで神戸市長田区にたどり着きました。いまだ煙と粉塵にまみれた現地に立ち、その恐ろしい光景を目の当たりにしたのです。もっとも被害の大きかった長田区の周囲は建物がことごとく焼き払われ、まるで空襲にでもあったかのような状況でした。
知人のビルを訪ねていったところ、かろうじてビルは外観を保っていましたが、壁には大きな亀裂が入り、エレベーターは使用不能になっていました。多くの窓ガラスが割れ、散乱しているような危険な状況の中、商品(運動靴メーカー)の在庫整理を必死に行っていました。
数年前に同じ場所に行く機会があったのですが、再開発された駅前周辺は新しいビルや飲食店が立ち並び、同じ場所であったことが信じられないような復興を遂げていました。20年超という月日は震災の痕跡を消すには十分な時間があったようです。
2013年に、関西地区の防災意識に関するアンケートをとったときも、市民の被災地という意識は年々薄まっている傾向が見られました。その結果として、災害への備えなどは特別行っていない人も増えてきていました。
新たに発表された「全国地震動予測地図」の意味
阪神・淡路大震災は全く予測されていなかった「無風地帯」で起きた地震だったのですが、地震調査委が発表する「全国地震動予測地図」は、これを予測できなかった反省の元に、2005年より毎年公表されています。その2017年版が昨年末に発表されました。もうすでに「地震予測はできない」と感じている方も多いとは思います。しかし、地震発生のメカニズム研究は日々進歩しています。正確な日時を指定することはできないものの、その地域がどのような発生リスクに晒されているかは、信頼度の高い資料として意識すべきものです。
発表内容で特徴的なのは、震度6弱以上の発生確率が関東で急上昇しているということ。日本列島で今後30年間の巨大地震の発生確率が上昇したのは北海道南部、宮城県、関東地方、新潟平野・庄内平野、石川県、四国・紀伊半島、九州などです。
関東直下型地震、南海トラフ地震の発生確率が上がってきているのは皆さんご存知とは思いますが、その周辺ばかりでなく、日本列島全体の発生リスクが上がっているということが、東日本大震災以降の研究で明らかになってきています。
地震予測の分野で確実に言えるのは、巨大地震は過去の記録の中で「一定の期間内に」「同じような被害が」「同一の地域で」確実に発生することが示されているということ。特に関東周辺はその「発生時期」に十分に入っています。市民は今一度、阪神・淡路大震災を思い出し、準備することが急務となっています。
関東直下型、震度7のリアリティ
関東大震災や阪神・淡路大震災当時とは建物の強度が違うから被害は少ない、と唱える人もいます。たしかに耐震性の高い建物は増えているとは思いますが、人口の密集度に関しても当時とは比較にならないほど増えています。もし大規模火災が発生すればその被害は当時と比較にならないほど大きなものになると考えられます。また関東に集中する経済規模は阪神・淡路当時の神戸エリアをはるかにしのぎます。それが同様、もしくは超える規模の地震に見舞われたとしたら、その経済的被害は本当に天文学的な数字となり、日本の経済の根本をゆるがす事態になることは明白です。ゆえに、官民上げて、被災リスクを低減する準備をしなければならないのです。
今回発表されたのは震度6弱以上の発生確率でしたが、首都直下型地震は東日本大震災で起きた揺れとはまったく性質の異なるもの。ビルや家屋を大きく破壊し、多数の火災を同時に発生させることが予測されています。水や食料を用意するのもいいのですが、まず自分の住む部屋、住む家、住む地域に潜むリスクを排除する努力が必要です。
本当に基本的なことですが、寝室の家具固定など、自宅を震災対策しておくことや、地域のコミュニティに参加し、地域の被災リスクを低減することなどの、日頃の努力が、震度7の最悪の強震にも耐える唯一の方法なのです。水や食料は命が助かってからのこと。すぐに実行できることから先に、今日から始めましょう。
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