入居後の小さな不具合がトラブルに発展する理由
家を建てる時には誰もが楽しく夢が広がるものです。そして建物引渡し時は人生の中でとてもうれしい時間でもあります。たいていの人は打ち合せもスムーズに行き満足した家づくりをしています。満足した家づくりができた人に共通していることは、施工者や設計者と良い信頼関係がつくれたことです。
例えば、家は一つ一つ手作りで作っていますので、仕上がりが悪かったり、住んでからなんらかの不具合が発生してしまう場合があるかも知れません。
そのような場合でも、施工者や設計者と良い信頼関係が築けていれば、問題はスムーズに解決することでしょう。
しかし、多少距離感のある関係性だった場合、小さな不具合や不満でも言いづらかったり、なかなかうまく伝わらなかったりして問題がスムーズに解決できず、トラブルに発展してしまう可能性があるかも知れません。
トラブルを避け良い信頼関係を継続するには、着工前から細かい打ち合せを重ね信頼関係を築いていくことがとても大切です。
良い関係を継続するポイントのコツ
1.事前説明をしっかり聴くようにする打ち合せから契約まで、そして工事中、引渡し時と入居後、何かあった時の対応をしっかり確認しておくことです。
たとえば木造の場合、夜中に木が割れる音がします。それは事前に木鳴りが起きますと聞いていれば安心するものです。記録で残せればなおよいでしょう。
2.メンテナンス基準を明確にしておく
瑕疵担保責任は10年の保証制度がありますが、そればかりでなくどこをどこまで保証するのかを明確にしておくことが大事です。
口頭ではなく資料や保証書など用意してもらえるのかも確認しておくことです。
3.お金の話を明確にしておく
一般にメンテナンスの費用はあいまいで実際に起きてみないとわからないことがあります。ただ『この外壁は何年に1回の塗り替えが必要でその時どのくらいの費用がかかるのか』ぐらいは把握しておくことです。特に自然素材を使う場合はメンテナンス費用も含めて確認しておきましょう。将来の資金計画やライフプランにもつながっていくからです。
4.もし将来他社でメンテナンスをした時は
新築後に小さなベランダだったので近くの工務店にメンテナンスお願いしたところ、雨漏りが発生してしまった。
これもよくトラブルの原因になります。できるだけ施工した工務店にお願いすることです。それは責任の所在があいまいになってしまうからです。
どうしても他社で行う場合は、その点をしっかりと認識した上でお願いすることです。
5.関係性を持続していくこと
工事中、現場監督は当然毎日のように現場に行きますが、工事完了すると次の現場に行きますので、前の現場とは疎遠になりがちです。
しかし1年に1回くらい家族と一緒に食事会をするなど良い関係性をつくっておくと、何か不具合などが場合はすぐに来てくれるものです。一言でいえば相称になってしまうのですが、できる限り良好なコミュニケーションをつくっておきたいものです。
施主から教えられたコミュニケーションの大切さ
私自身、設計監理をして竣工後何度か食事会に呼ばれることがあります。その中で特に印象に残った出来事がありました。建物を引渡し住み始めて3年たってから新築祝いをしたお施主さんがいました。その時に「建物は住んで住み心地を確かめなければわかりません。3年たってこの家の住み心地がわかりました」というあいさつの言葉を頂きました。とてもうれしくかつ家をつくることの責任をまたひとつ教えられた気がしました。
あたり前ですが、施主は一生に一回の大仕事です。いつもその心に寄り添っていくことが求められます。
近年、上棟式などの儀式が行われないことが多くなっていますが、こういった場で職人とのコミュニケーションをとることも大切なことです。私はひとつのコミュニケーションツールとして、上棟式の際に大漁旗をあげて関係者全員でお祝いをしています。
上棟式の際にあげる当事務所の大漁旗