300カ所ものパーツ交換で古びた印象は皆無
190Eは、80年代に一世を風靡した小型のメルセデスサルーンだ。W201という型式名が示すとおり、現代のCクラス(=W205)の元祖というべきモデルである。バブルの頃、“コベンツ”と揶揄された。しかし、そのライドフィールもまた、良い意味で“コベンツ”とよぶにふさわしいものであったことは、意外に知られていない。当時のメルセデスは、今と違って、フルラインナップメーカーではなく、あくまでも中型と大型のサルーンを中心とするプレミアムブランドだった。
主力モデルはEクラスであり、そしてSクラス。そんな時代の小ベンツである。スタイルのみならず、クオリティやライドフィールもまたEやSをそのまま小さくしたものでしかなく、日本の5ナンバー枠に収まるコンパクトサルーンとしては、明らかにオーバークオリティであった。
小ベンツの190E登場を機に、現在の絶大なる支持が始まったと言っても過言ではない。
今回、メルセデス・ベンツ日本から、リフレッシュ・レストアされた190Eに乗ってみないかと誘われ、二つ返事で引き受けた。これまで何度か、オーナーカーの190Eに試乗してきたが、いずれもその“現役ぶり”に驚かされ、感激した記憶が蘇ってきたからだ。
アシ回りやブッシュ類、消耗メンテナンス品など、実に300カ所ものパーツを日本で交換し、リフレッシュされた93年最終型の190Eは、その佇まいも凛としており、クラシックなカタチではあるけれど、古びた印象など皆無。実に、気持ちのいい見栄えである。