近年になって注目されてきたE型肝炎
肝炎ウイルスとは、肝臓を主な標的臓器とするもので、発見された順番に、A,B,C,D,Eとなっています
1989年にウイルスが特定されて、やっとC型肝炎と名付けられました。よく耳にするC型肝炎ウイルスですが、実は特定されてまだ20年ちょっとしか経っていないのです。その後、D型肝炎、E型肝炎と肝炎ウイルスが発見されましたが、D型やE型肝炎ウイルスは他の肝炎ウイルスと比べて数が少なかったこともあり、さほど注目されていませんでした。
ちなみに、肝炎ウイルスとは、肝臓を主な標的臓器とするウイルスのことです。肝炎ウイルス以外にも、サイトメガロウイルスやEBウイルスなども肝炎を引き起こすことがありますが、標的臓器が肝臓のみでなく全身臓器に感染するため、肝炎ウイルスとは呼びません。
E型肝炎が増加してきた理由とは
E型肝炎ウイルスは、熱帯および亜熱帯の発展途上国で流行がみられ、衛生状態の悪い国の感染症と考えられていました。しかし、最近では、わが国でも家畜の豚や野生のイノシシなどからE型肝炎ウイルスやその抗体が検出され、豚肝臓(レバー)や野生動物の肉、内臓の摂食による肝炎発症が報告されています。豚の生レバーは、E型肝炎ウイルスや寄生虫に汚染されている可能性が大です
厚生労働省からも、以下のように勧告されています。
・ 豚レバーを含む豚肉並びにシカ及びイノシシなどの野生動物の肉(内蔵を含む)は生で食べないようにしましょう。
・ 豚肉並びにシカ及びイノシシなどの野生動物の肉は中心部まで火が通るよう、十分に加熱して食べましょう。このような加熱はほとんどの危険な微生物を死滅させることが確認されています。また、他の動物の肉については、若齢者や高齢者など抵抗力の弱い方は生肉の摂取を控えるようにしましょう。
・ 加熱調理を行う肉類は生焼けにならないよう中心部まで十分に火が通るよう、十分に加熱してください。
・ 生の肉類と加熱済みの肉類は分けて取り扱いましょう。取り扱う箸や皿も区別して使用してください。
E型肝炎の症状と食事の際の注意点
E型肝炎ウイルスは感染すると急性肝炎を引き起こし、高齢者や妊婦の感染例では劇症化の報告もあります。慢性化することはないとされています。輸血による感染も報告されており、日赤ではE型肝炎が多いとされる北海道で、輸血用血液におけるE型肝炎のスクリーニングを試験的に行っています。E型肝炎に対してのワクチンはありません。E型肝炎に感染した場合、すべての人が肝炎を発症するわけではありませんが、発症した場合は黄疸や食欲不振、発熱などの症状をきたします。E型肝炎の治療は状況に応じた対症療法しかなく、劇症化し集中治療室での高度医療が必要になることもあります。
豚(レバーなど)やシカ、イノシシは生で食べるのは避けなくてはいけません。中心部まで火が通るように加熱すれば、E型肝炎ウイルスは感染性を失うため感染の危険はありません。