韓国の主婦層のゴールデンタイムは朝
日本で主婦をターゲットにした時間帯といえば、昼から夕方にかけてで、昼メロや、ドラマの再放送などが多いですが、韓国ではその時間帯にドラマは放送されていません。というのも、かつて韓国の地上波は、省エネや、後発の有料チャンネルの競争力向上などを理由に、放送時間帯に規制がありました。KBSの開局当初の1961年は、1日4時間であった放送時間の規制は徐々に緩和されましたが、2005年までは昼12時から16時までの時間帯は放送を休止していたのです。規制が解かれてからは、その時間帯にはニュース番組、報道番組、子供向け番組などが編成されていますが、韓国の主婦には昼下がりにドラマを見る習慣が根付いていないためなのか、ドラマ枠は設けられていません。代わりに韓国の主婦層のゴールデンタイムは、平日、朝7時から8時台で、昼メロのような不倫・復讐系のドロドロドラマが、たくさん放送されているわけです。
儒教の国なのに、なぜ不倫ドラマが人気?
姦通罪が今も存在し、最高2年の刑が科せられる儒教の国、韓国で、なぜ不倫ドラマが多いのでしょうか? それは、ドラマの内容が妻の不倫ではなく、夫が不倫するものがほとんどだから。悪女に夫を奪われて捨てられた平凡な主婦が一念発起し、キャリアウーマンとなって美しく変身。そして素敵な男性に出会って幸せをつかむ。さらには、悪女と夫にもお灸をすえるといったストーリーが大人気なのです。韓国の主婦たちは、ヒロインに感情移入することによって、夫への不満や、日頃の家事のストレスを解消し、痛快な気分になるのでしょう。日本では、不倫を純愛として描いたドラマが多いのに対し、韓国では不倫を成敗する内容のドラマが圧倒的に多いのが特徴です。
まさに、そのようなストーリーで最高視聴率40.6%を記録したのが、2008年のドラマ「妻の誘惑」。不倫した夫に殺されそうになった妻が、別人になりすまし、復讐のために元夫を誘惑するという内容で、ありえないと批判を受けながらも人気を博しました。
しかし、近年では「昼顔」のような、不倫ロマンスもの徐々に増え、人気を集めています。今夏は、日本の小説「東京タワー」をアレンジしたドラマ「密会」が、繊細なストーリーと映像美で高い評価を受け、20歳年上の女性と恋に落ちるピアニスト役を演じたユ・アインが、女性視聴者を虜にしました。以前ならば、不倫を美化すると非難されていたであろう作品が受け入れられるようになったのも、時代の流れなのかもしれません。