聖マルティンの日とガチョウ料理の関連性
11月にオーストリアを訪れるなら絶対に見逃せないガチョウ料理!
毎年11月11日は4世紀に生きた聖人、聖マルティンの記念日に当たり、オーストリアではこの日を中心とした前後2週間にガチョウ料理を大々的に味わう習慣があります。しかし、いったいなぜ聖マルティンの日にガチョウが食卓に並ぶようになったのでしょうか?これには諸説があるのですが、ここでは代表的なものを見ていきましょう。
■キリスト教的逸話
聖マルティンとガチョウ料理を関連付ける数ある説の中でも、もっとも有名なものがキリスト教に基づくエピソード。そもそもこの聖マルティンとはローマ兵から後に司教へと転身した人物で、その慈悲深さがうかがえる次のような逸話があります。
”ある雪の夜、ローマ兵として駐屯中であったマルティンは、ボロを纏った憐れな貧しい人に自らの外套を裂いて分け与えました。実はこの人物こそイエズス・キリスト自身であり、その夜マルティンの夢に現れてこう言いました。「見よ、このローマ兵はまだ洗礼も受けていないのに、私をマントで覆ってくれた」”
後に洗礼を受けて修道士となったマルティンは、やがてトゥールの司教に推される運びとなります。しかしそのような高官職は自らには務まらないと、職を固辞したマルティンはガチョウ小屋に身を隠すのですが、ガチョウが騒いだために見つかってしまいます。そこで晴れて司教に任命された祝宴では、彼の居場所を知らせたガチョウがその罰に料理として振舞われたことなどから、聖マルティンの日にガチョウを食べる伝統ができたということです。
■収穫祭からくる説
古くはビザンティン教会(東方正教会)のしきたりで、11月11日は年度最後の断食開始日の前日、収穫祭の日でした。そのため人々はその年の収穫を祝いながら、来たる断食期間に備えてご馳走をたらふく食べたとされています。中でもガチョウは一対のつがいを除き、残りのすべてをほふって食べていたことから、現在でも11月11日にはガチョウを食べる習慣が残っていると伝えられています。
※収穫祭:その年の作物が無事収穫されたことを感謝する祭祀行事
■納税日からくる説
11月11日は冬の始まりの日とされ、同時に昔は納税の日でもありました。当時は冬の到来を前に、税を農作物などで納めることが多く、ガチョウを差し出す人も多く存在したと言われます。そのため、この日に献上されたガチョウを支配者階級がこぞって食べた風習が、現在も伝統的に残っているとされています。
次のページでは、典型的なガチョウ料理を見ていきます!