制球がいいだけではない、適応力の高い投球が岩隈の強み
「彼はピッチングを知っている」と監督からも絶賛の言葉しか出てこない。
マリナーズの岩隈久志投手(33)が8月8日(日本時間9日)、地元シアトルでのホワイトソックス戦に先発し、7回を5安打1失点に抑え、2年連続の2ケタ勝利となる10勝目(6敗)を挙げた。
今季日本人投手の2ケタ勝利は、ヤンキース・田中将大(12勝4敗)、レンジャーズ・ダルビッシュ有(10勝6敗)に次ぐ3人目。同一年に日本人投手3人が2ケタ勝利を挙げたのは、1999年(吉井12勝、野茂12勝、伊良部11勝)、2002年(野茂16勝、石井14勝、大家13勝)、2013年(岩隈14勝、ダルビッシュ13勝、黒田11勝)に次いで2年連続4度目となった。今後、ヤンキース・黒田が2ケタ勝利をマークすれば、シーズン4人は最多となる。
「きょうは変化球が全部悪かったけど、何とか粘り強く投げられた」と岩隈は区切りの投球を振り返った。試合前のブルペンから“調子が良くない”ことを自覚し、宝刀スプリットの制球も今ひとつだった。四回にはビシエドにシンカーをスタンドに持っていかれた。それでも勝ちを引き寄せることができたのは、まず、ストライクを先行させる意識だ。
高めに投げず、低めを突いて、無駄なボール球を投げない。今季、19試合に登板して、無四球試合はこの日も含めて11試合。与四球率(9イニングあたりの与四球数)は0.75で両リーグトップ。1試合1個にも満たない四球の少なさ。“ただ単に制球がいいというだけではない”が岩隈の信条なのだ。そして、スプリットがダメならカーブを、シンカーが切れないなら逆のスライダーをとその日の調子で切り替え、適応できる強味がある。当然、マクレンドン監督の口からは「この世界で成功できる投手は、調子が悪くても抑えることができるし、試合をつくることができる。彼はピッチングを知っている」と絶賛の言葉しか出てこない。
右手中指の負傷で約1カ月も出遅れながら、8月上旬に早くも2年連続の2ケタ勝利に到達した。それ以上に昨季からの2シーズンで350投球回に到達したことが大きい。今年は2012年オフにサインした2年契約の最終年で、3年目の来季は球団オプションとなっている。その契約条項の中に2年間で350投球回をクリアすれば、自動的に契約が延長される条項があり、しかも、今季年俸から50万ドル増の700万ドル(約7億1400万円)が保証される。つまり、この日の好投で来季もマ軍でプレーする権利を勝ち取ったのだ。
マ軍はこれで4連勝。ワイルドカード争いでは2位(2位までがプレーオフへの出場権が得られる)のロイヤルズに0.5ゲーム差とプレーオフ進出圏内につけている。もし、プレーオフ進出ともなれば、マ軍にとっては13年ぶりで、岩隈にとっては初めての出来事。「2ケタ勝てたのは自信になったし、プレーオフ争いに貢献できるのはやりがいを感じる。これからもどんどん勝っていきたい」と胸を張り、目を輝かせた。