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5年物新窓販国債、過去最低金利に

2014年下半期から個人向け社債の発行は急増しましたが、肝心の利率は期待したほど高くはありませんでした。やや高めのものは償還期間が10年と長いことから、投資妙味があるとは言えない状況です。市場金利の低下がその要因ですが、8月募集の個人向け国債も売れ行きは芳しくないと思われてなりません。個人向け社債を含め、足元も債券を取り巻く環境を見ていくことにしましょう。

深野 康彦

執筆者:深野 康彦

お金の悩みに答えるマネープランクリニックガイド

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投資妙味は長期金利次第

個人向け国債、新窓販国債は毎月定期的に、個人向け社債は不定期(随時)に募集(発行)されています。発行の頻度こそ異なるものの、その利率は長期金利を基本とし、個人向け社債は信用度が加味されて、最終的な利率が決まることになっています。

その長期金利ですが、2014年度に入ってから低下傾向にあると述べましたが、2014年7月には低下傾向に拍車がかかった気がします。6月に瞬間0.555%を付けた長期金利は、7月上旬には0.53%を付け、同月下旬には一時0.51%と2014年4月以来、歴史を紐解いても数日しか記録していない金利水準まで低下してしまったのです。

金利の低下は売却益を狙う投資家にはフォローの風になりますが、あくまでも既に債券を保有している投資家にとってはメリットがあるということで、これから売却益を期待して債券に投資するには追い風とはならない可能性があります。相場に絶対はありませんが、長期金利の水準が歴史的な低さである以上、さらなる大幅な低下は見込みにくいからです。

長期金利が上昇に転じれば、フォロー風は一転して向かい風になり売却益が期待できなくなるばかりか、タイミングによっては売却損を被る可能性すらあり得るのです。ただ、長期金利は景気の先行指標ともいわれていることから、長期金利の低下が今後の景気後退を示唆しているならば、歴史的な低水準であっても債券への投資妙味が薄れたわけではないといえるでしょう。

国債の利率は横ばいまたは低下

2014年8月の募集の新窓販国債5年物こそ募集条件が決まっていませんが、他の国債は募集条件が決まっています。募集条件が決まっているものから見ていくことにしましょう。

8月募集(9月発行)の個人向け国債の利率は、3年固定こそ7月募集と同じ0.06%でしたが、5年固定は0.10%と7月募集より0.02%低下。10年変動も0.34%と7月募集より0.03%低下しています。

一方、新窓販国債は2年物の利率は0.10%、10年物は0.60%と7月募集の国債と変わっていません。10年物は過去最低の利率0.50%に肩を並べると思われましたが、ギリギリ踏んばったようです。5年物の条件が決まるのは8月の中旬ですが、長期金利等の動向を考慮すれば、7月募集同様0.10%の利率になりそうです。

あまり騒がれていませんが、新窓販国債5年物の利率0.10%は過去最低金利を更新しました。2年物、5年物の利率が0.10%と同じになるのは、国債の発行が行われてから初めてのことです。過去0.10%の金利を下回ったことがないことから、2年物、5年物の利率0.10%という水準は最低金利、大底に達したと考えられます。

なぜなら、償還期限が7年未満の債券は、利率が0.1%未満になると売却時の課税が譲渡所得になってしまうからです(個人向け国債を除き通常は非課税)。

個人向け社債は発行の勢い衰える

7月に新規発行が急増した個人向け社債ですが、8月は新規発行がまだ1件も決まっていません。例年8月は、株式のIPO(新規公開)もほとんどないことから、個人向け社債の発行もほとんど夏休み状態のようです。普通社債こそ発行が行われていますが、個人向け社債の発行は秋まで待った方がよいと思われます。

ただし、長期金利が足元の状況と変わらなければ、条件の良い=利率が高い個人向け社債の発行は期待できない可能性が高いでしょう。可能性があるとすれば、2014年上半期に発行が1度も行われなかったSBIホールディグスのSBI債、マネックスホールディングのマネックス債です。淡い期待かもしれませんが、両債券の起債に期待したいところです。
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