意外と長く続きそうな名刺という特殊な習慣
実際のところ、既に名刺はその役割を終えているような気がしないではありません。でも、初対面の相手との名刺交換という儀式は、やめてしまうには惜しい習慣ではあるし、名刺という小さな紙片による自己紹介と、それを交換してお互いに所有する、まるでトレーディングカードにも似た、「名刺」というカードの魅力も、まだまだ健在。そこに長年の習慣もあって、名刺という文化のようなものは今しばらく続いていくような気がします。連絡先そのものは、今や、メールの署名欄の方が情報としても充実していますし、Facebookなどの社会人向けのSNSは、名士のデジタル版のようなものでしょう。だから、名刺が持つ情報は、普段はあまり重要ではありません。ただ、メールや電話でやり取りをしていた相手に何かを送らなければならないとか、会社の代表番号を知りたいとか、パソコンの破損でメールアドレスなどのデータが失われた時など、いわゆる「いざという時」の情報のバックアップとして、名刺はまだ重要な役割を果たしてくれます。
ただ、実際の連絡などに名刺が使われるわけでもなく、必要な時に参照出来れば良いだけなので、結局、名刺用のファイルなどに入れておけば、多少探すのは面倒でも、何となく用は済んでしまうせいか、ガイド納富の場合、名刺の整理や管理というのが、今一つ身にしみなかったのです。誰かの連絡先を調べる場合も、メールを検索するか、Facebookを検索すればどうにかなるし早いので、名刺自体を活用する事にならないのです。とにかく手元に近いところにあればいいや、という感じでした。もちろん、会社などではデータベースで管理しているのだと思いますし、名刺管理ソフトもスキャナも沢山あるので、本気で管理するなら色々やりようはあると思います。
名刺管理をしても良いと思わせるダイヤルグルグルのインターフェイス
問題は、たまにしか使わない名刺の管理にそんなに時間を取れないということです。そして、名刺の性格上、そこに書かれている情報の幅が広く、データベース化するにしても面倒くさいし、デザイン自体が重要な名刺とかもあって、デジタル化するにしても、考えることが多いんですね。要するに、面倒くさいという事なのですが(そして、これはろくに名刺管理ができなかったガイド納富の単なる言い訳ですが)、そのあたりの兼ね合いが丁度いい、名刺管理ツールが、キングジムの「MEQRU(メックル)」なのだと思うのです。何より、この「MEQRU」を入手したガイド納富は、その日の内に1000枚ほどの名刺を読み込ませて、結局、三日で、とりあえず手持ちの、まだ相手がそこに存在している名刺については全てを、この「MEQRU」に登録してしまいました。つまり、ついにデジタルによる名刺管理を始めてしまったのです。要するに、面倒くさくなかった、という事なんですね。いや、作業そのものはワンタッチで全部やってくれます、というようなものではなく、それなりの手順は必要なのですが、その手順が苦にならないんですね。
「MEQRU」は、基本的には、この本体のみで完結する名刺管理ツールです。ですから、デジタル化といっても、パソコンは不要です。もちろんパソコンに繋ぐことも出来るのですが、そこで行えるのは主にデータのバックアップや、他のキングジムの名刺管理ツールとのデータの共用程度で、名刺の読み込みと管理、閲覧は、基本、本体のみで行います。多分、この「本体のみ」で完結している、というスタイルと、でもバックアップは取れる、という安心感が、デジタルとアナログの丁度良いあたりなのでしょう。
そして、読み込ませる手順の、良くいえば楽しさ、悪くいえば適当さが、また良い感じなのです。手順はまず、本体の上部に名刺を差し込んで、ダイヤルの中央にあるボタンをクリック。これで、名刺が本体内に吸い込まれて下から出てきます。その際、読み取っている名刺が、そこを通り抜けているような感じで、名刺のグラフィックがディスプレイに表示されます。これは、同じキングジムのiPadをスキャナにする「iScamil」と同じギミックですが、スキャンしている画像がリアルタイムに表示されるのは、見た目の面白さだけでなく、きちんとスキャンされているなあという安心感があります。
そして、スキャンが完了したら確認して、名刺の向きなどを変えたければ回転させたり、裏面もスキャンしたければ裏面スキャンのボタンを押したり。それから、あいうえお順に並んでいるタブを操作して、今読み込んだ名刺をどの位置に保存するかを決めます。このデジタル機器なのに、名刺をどの順番に入れるかをダイヤルをグルグル回すというアナログな操作で決めるというのが、実は、この「MEQRU」の操作のポイント。何ともアナログっぽいダイヤルの回し心地が良いのもポイントが高いのですが、適当に回して、「あ、ここにしよう」でボタンを押したら登録完了、という操作性が、その多少の手間のせいもあって、不思議な達成感があるのです。さらに、大体この辺でいいや、探す時に分かればいいから、という適当さを受け入れてくれる隙があるのも悪くないのです。
ぐるぐる回して名刺を探すのは昔からの伝統的操作
面白いのは、名刺をグループで管理出来ること。といっても、データベース的な本格的なものではなく、名刺を登録する際、ダイヤルをぐるぐる回して入れる場所を決めるのですが、その際に、名刺と名刺の間だけではなく、名刺そのものを選ぶと、その名刺と今読み込んだ名刺は一つのグループとして登録されます。つまり、同じ会社の人たちは、同じ会社として、その会社の名刺と同じ場所に入れるだけでグループ化されるんですね。これが便利なのです。検索する際も、ぐるぐるとダイヤルを回して、その会社の名刺が出てきたら、そこでワンクリック。すると、その会社の人々の名刺ががずらりと並ぶので、そこでまたダイヤルを回して一人を選ぶ、という操作になるんですね。ですから、基本的に会社相手の付き合いの場合、会社名で並べて登録し、個人の付き合いの場合、名字のあいうえお順で並べる、というルールが混在した並べ方をしても、実際の検索時にはあまり混乱しないんですね。むしろ、自分の頭の中で、「××社の○○さん」と思う時は社名から、「カメラマンの××さん」とか思う時は名字から、ダイヤルをぐるぐる回して探せばよいので、考えてから手を動かす時の流れが自然です。そういう部分も含めて、名刺をダイヤル操作で探す名刺管理ツールのベストセラー「ローロデックス」のインターフェイスの見事さに改めて感動したりするのですが。
「ローロデックス」の昔から、名刺はパラパラと捲りながら見るものです。その方が検索性も高いというか、パラパラ見てる方が、「あ、この人はもうここにはいない」といった名刺の状況を確認しやすく、その分、最新の状態に保ちやすいというメリットもあります。また、登録する順番が多少前後していても、ダイヤルを回して探すインターフェイスだと、行きつ戻りつが楽なので、あまり気にせず目的の名刺に辿り着けます。そのインターフェイスとして最も重要なダイヤルを、きちんと大きくして、回しやすくして、ディスプレイの反応も、そのダイヤルの速度に合わせて動くように調整したことが、この製品の「分かってる」ポイントだと思うのです。
ガイド納富の「こだわりチェック」
例えば、この「MEQRU」で読み込んだデータは、解像度も低くパソコンに取り込んでもOCR(光学文字認識)がかけられません。なので、基本、視認で探すことになります。パソコンでデータを編集して、それを本体に書き戻すことも出来ません。出来るのは、極端に言えば、読み込んだ名刺をダイヤルを回して探せるということだけです。ただ、ガイド納富のような、名刺は個人情報のバックアップの一つ、という考え方だと、これで充分なのです。というか、この程度だからこそ、使いたいと思うのです。名刺は置いておくだけでも場所を取ります。それはファイルに入れておいても同じというか、それだともっと場所を取ります。それが、一ヶ所にまとまっていて、ダイヤルを回せば探せて、しかも、デザインそのままに管理出来るのですから、実際、とても助かるのです。パソコンを立ち上げなくても閲覧、読み込みが出来るのもあり難いし、元々、名刺が必要なシチュエーションは、パソコンとは関係ない場合が多いので(パソコンが立ち上がっていればメールを検索した方が早いので)、スタンドアローンで動く方が、それこそ「いざという時」素早く使えます。使うといっても、名刺を確認して住所や電話番号を書き写す程度ですから、機能的にはこれで充分なのです。
デジタル化されたローロデックスという趣のデザインも机の端に置いた時の収まりが良く、もう、特に必要が無くてもダイヤルをぐるぐる回したくなる、手混ぜ道具としても優秀。名刺を緩く管理したい、その割りに結構枚数溜まってる、という人には、これ、相当役立ちます。自分でビックリしました。データはバックアップ出来るから、元の名刺は捨てても大丈夫。ガイド納富は、持っていた方が面白そうな名刺(紙が凝っているもの、有名人のもの、友人の黒歴史っぽいものなど)以外は全部捨ててしまいました。そのスッキリを味わえるのも、「MEQRU」の楽しさかもしれません。
<関連リンク>
・キングジムの「MEQRU」のページ
・キングジム提供の名刺管理ソフト「DA-1」はこちらから