バイクで夜の風を感じるナイトラン
梅雨が明ければ夏真っ盛り! バイクに乗るのが楽しい季節……ですが、暑すぎるとライダーはもちろん、バイクもエンジンが熱くなってきちゃって「乗っててたまらん!」なんてことも。そんなオンシーズンのバイクの楽しみ方のひとつが、夜の街をバイクで走る——ナイトランです。うだるような日中の暑さやアスファルトの照り返しも、夕暮れとともに次第にひいていき、ややひんやりとした風とともに過ごしやすい夜が姿を現します。空調のきいたクルマとは違い、バイクは風そのものが体に吹きつけてくるので、気温や湿度など環境の変化を肌で感じ取ることができるのです。このナイトランの心地良さといったら……。
バイクに縁遠い人にとっては「暴走族?」なんて思われるかもしれませんが、節度を持った大人のバイク乗りによるナイトランは、子供のお遊戯とはまったく違います。吹きつける風にスピードはいらず、いつも走るストリートの“夜の表情”を楽しみながら、喧噪が遠のいた街を駆け抜けていく……。僕(30代後半)の世代で言えば、TMネットワークの『GET WILD』が一番イメージしやすいところでしょうか。
ナイトランが気持ち良いのは、春から秋にかけてのいわゆるオンシーズン。もちろん冬でも走ったりしますが、やや修行的な要素が含まれてくるので、気合いの入った方はぜひチャレンジしてみてください。……と、せっかくのオンシーズンなので、この時期に僕がよく走りに行くナイトラン ルートをご紹介しましょう。
バイクでゲートブリッジを走る・東京タワーに立ち寄る
お仕事によっては帰る時間もさまざまですが、陽が長い夏だと19時ぐらいでもマジックアワーが楽しめる風景が広がっています。アスファルトからは熱がひき、余熱と冷えた風がちょうどいい感じにミックスする時間帯です。まぁ僕の場合、たとえとっぷりと日が暮れてしまっても「走りに行きたい」と思えば出かけちゃいますが。最近よく走りに行くのは、一昨年開通した東京ゲートブリッジ。ライダーの姿を見かけることが珍しくないので、もはや東京の定番快走ルートと言っていいでしょう。海から強風が吹きつける日は若干ドキドキしてしまいますが、比較的交通量が少なく(時間帯によりますが)、片側に海が広がり、反対側に東京の街並みが一望できる巨大ブリッジはなんとも言えない爽快感があります。余談ですが、B'zのボーカリスト稲葉浩志さんのソロ作品『Stay Free』のプロモーションビデオにて、稲葉さん自らがバイクに乗ってゲートブリッジを走るさまが話題を呼びました。それぐらい都内のバイク乗りにとっては聖地と化しつつあるロードなのかもしれません。
このゲートブリッジの真下にあるのが若洲公園。キャンプ場や釣りのスポットとして有名な公園で、ここから見る夜のゲートブリッジはライトアップされて実に美しいのです。反対側に目をやると、ネオンで彩られた東京の夜景を一望することも。ゲートブリッジを走ろうというバイク乗りの休憩場所にもなってきていますね。このライトアップ、月ごとにカラーが異なるそうですので、その模様を楽しみに足を運ぶのもいいでしょう。
颯爽とゲートブリッジを疾走し、トンネルを走り抜けて大井方面へ。個人的に楽しいのはトンネルを走るとき。オレンジ色の灯火は日中と変わらないとはいえ、肌に感じる風とあいまってまったく違う世界に入り込んだかのような気分にさせてくれます。もちろん脳内では『GET WILD』が流れてくるわけです……世代によってはわかりづらいかもしれませんが、気になる方はYOU TUBEで視聴してみてください。
都内をぐるぐると流すときは、東京タワーに立ち寄ったりすることも。旬なのは東京スカイツリーだと重々承知しつつも、この昭和の薫りがする艶やかな赤いタワーは、夜のライトアップとともに妖艶な輝きを放つのです。バイク盗難が怖い僕としては、駐輪場に停めた愛車をそのままにして離れたくないので、近くの自動販売機で買ったコーヒーを飲むにとどめます。それにしても、眺めているだけでこれだけ見入ってしまうとは……そんな気持ちにさせてくれる不思議な存在、それが東京タワーです。
ナイトランで行くカフェ&ハンバーガーショップ!
そんなナイトランに出かけた先の目的は? そのままずっと走り続けるのも一興ですし、大きな駐車場やコンビニで缶コーヒー片手に仲間と談笑するのも楽しいもの。過ごし方は人それぞれだと思います。僕の場合は、夕方過ぎに出かけられればお気に入りのバーガーショップまで足を伸ばし、ボリューミーなハンバーガーに舌鼓をうってから再び走り出します。自分が乗っているバイクがハーレーダビッドソンということもあり、せっかくだからそのへんの雰囲気も自分で演出しちゃいますね。チェーン店とは違うバーガー専門店は味もボリュームも本場以上。気持ちもお腹もふくらんじゃうというわけです。あと、やっぱり“夜のカフェめぐり”も楽しみ方のひとつですね。バイクと言えばカフェ、ナイトランと言えばカフェです。その理由は1960年代イギリスでのこと、若いライダーが速さを競うのを目的にカフェからカフェへストリートレースをしていたことから、そのスタイルを『カフェレーサー』と呼ぶようになったのです。今ではバイクのカスタムスタイルとして語り継がれています。“バイクとカフェ”のつながりの深さは、半世紀以上も前のロンドンで生まれたものなのです。
バイク乗りが集まるライダーズカフェと呼ばれるお店が都内にもいくつか存在しますが、心地良く過ごせるカフェに行くのが一番。なかなか夜遅くまで開いているカフェは多くないのですが、ひとりで過ごす特別な時間や仲間との楽しいひとときを提供してくれる、それが“夜カフェ”です。
都内を流したら帰路につくわけですが、もちろんゲートブリッジを走ります。平日だと、夜遅くでもクルマやトラックが結構行き来していますね。ちなみにこのゲートブリッジ、ちょうど上空が羽田空港へと向かう飛行機のルートのようで、昼夜問わずさまざまな飛行機が轟音とともに頭上を通っていきます。チカチカとライトが光る機体とライトアップされたゲートブリッジが織り成す風景はまた格別。
“大人のバイク乗り”だからこそ楽しめる
もちろん、夜にバイクで走るうえでの危険もあります。視認性は確かに落ちますから不意な歩行者や車にも気をつけねばなりませんし、真っ暗な路面に潜む障害物でキモを冷やすことも。日中のツーリングとは違った異世界でもあるわけですが、ナイトランはその風の気持ち良さはもちろん、バイクに乗っているからこその特別なひとときを味わえるものでもあります。“大人のバイク乗りだからこその楽しみがある”というところでしょうか。せっかくの夏のひととき、こんな過ごし方もいかがでしょう?
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