ドゥカティが示した新しいバイクのスタイル
そのスタイルはどのカテゴリにも属さない
バイクに詳しい人も、そうでない人も、この姿を初めて見たら「なんだこれは?」と目を見張ることでしょう。これまでのモーターサイクル本来のイメージを大きく覆そうとする奇抜なデザインでまとめられたドゥカティ ディアベルがこれです。2010年に世界デビューをはたした同モデル、日本初登場となった2011年3月の東京・大阪のモーターサイクルショーでは、来場者の注目を一手に集めて話題を呼びました。“ディアベル”という名を聞いて気づかれた方もいらっしゃるでしょう、イタリア語で「悪魔」を意味するディアボロのボローニャ(ドゥカティ本社の所在地)読みで、その妖艶なるビジュアルと走りで乗り手を魅惑の世界へといざなう悪魔……という意味が込められているよう。どのメーカーもさまざまなスタイルのバイクを輩出していますが、ここ最近でディアベルほど既成概念を打ち破ったデザインのバイクはちょっとなかったんじゃないでしょうか。初めて目にしたときは「なんかスゴいのが出てきたぞ!?」と、驚きと戸惑いが入り交じったような気持ちになったのを覚えています。
今回紹介するのは、数タイプあるシリーズのなかのひとつ『ディアベル カーボン』と呼ばれるもので、タンクカバーや前後フェンダーが軽量なカーボン素材で作成され、またホイールもディアベル カーボン専用のものというグレードアップ仕様。そしてその走りを支えるエンジン『テスタストレッタ11°DSエンジン』の最新仕様に新型エキゾーストシステム、フルLEDヘッドライトと、ビジュアルも新たになった2014年最新バージョンです。
ディアベルの特徴は、なんといってもロー&ロングにしてマッシブなそのスタイル。特にこの角度(斜め後ろ)から見たスタイルは、これまでのモーターサイクルでは異形とも言える巨体です。ホイールベース(前後ホイールの中心を結んだ直線距離)は1590ミリもあり、ドゥカティのなかでも大柄な部類に入るムルティストラーダというモデル(1530ミリ)と比べるとその長さが分かろうというもの。過去のドゥカティのラインナップを見返してみてもちょっと見当たらないクルーザーモデルであることが伺えます。さすがはデザイン性を重視したモデル開発に心血を注ぎ込んでいるというドゥカティ。このビジュアル、国産メーカーではちょっと考えつかない領域のものだといえるでしょう。
軽量かつ頑丈なことで知られるカーボンパーツを多用しているものの、「これだけ大柄なバイクだと重量も相当なはず、取り回すのが相当困難なのでは?」と思われるでしょうが、スペック表を見てみると、なんとわずか205kg! 数字だけ見てもピンとこないかもしれませんが、ハーレーのなかでも軽量といわれるスポーツスターの平均重量は約260kgと、これだけでも比べものにならない軽さです。加えて、専用のブレンボ製ホイールに同じくブレンボ製ブレーキ&マスターシリンダー、そして専用に開発されたサスペンションを標準装備と するなど、本来の走行性能を最大限に活かす軽量化と足まわりの強化が図られており、ただのクルーザーでないことが窺い知れます。
そんなディアベルの“モーターサイクルとしての楽しさ”はいかほどのものか。それでは実際に試乗してみた感想を述べてみたいと思います。