投手では21世紀に入ってから初の受賞
月間MVPを受賞した田中の次なる目標は……。
田中は5月、6試合に登板し、14日(同15日)のメッツ戦でメジャー初完封勝利を挙げるなど5勝1敗、防御率1.88の好成績をマーク。日本人選手が新人で受賞したのは、1995年6月の野茂英雄(ドジャース)以来19年ぶり。新人以外では、1996年9月にも選ばれている野茂の他、1998年5月と1999年7月に伊良部秀輝(ヤンキース)、2004年8月にイチロー(マリナーズ=現ヤンキース)、2007年7月に松井秀喜(ヤンキース)の4人が受賞している。投手では21世紀に入ってから田中が初めてとなる。
「うれしい。ほかにもたくさんいい投手はいますから、選ばれるとは思っていなかった」
田中は4月も5試合に先発して無傷の3勝、防御率2.27をマークして候補に入ったものの、4勝1敗、防御率1.76のアスレチックス・グレイにさらわれている。その悔しい思いを翌月にすかさず“リベンジ”して晴らしたのだ。
それにしてもこの2カ月間の安定感には目を見張るものがある。5月31日(同6月1日)のツインズ戦で8回4安打1失点(自責0)で8勝目を挙げたが、これでデビューから11試合連続のクオリティースタート(6回以上投げて自責点3以内)となり、1973年に16試合連続のスティーブ・ロジャース(エクスポズ)以来、史上2人目の大記録を達成した。先発投手の安定度を示す指標の高さが、月間MVPというメジャー初タイトルを田中にもたらせたと言っても過言ではないだろう。
こうなってくるとガ然、可能性が出てきたことがある。それは、日本人では1995年の野茂英雄(ドジャース)以来となる米球宴(7月15日=同16日、ミネアポリス)での先発だ。その年の野茂は5月2日(同3日)にデビュー、5月は6試合で0勝1敗と苦しんだが、6月は6戦6勝と絶好調で月間MVPを獲得。前半戦成績は、13試合で6勝1敗、防御率1.99、119奪三振で、日本人選手初の球宴メンバーに選ばれ、ナ・リーグの先発投手を務めた。田中は3日(同4日)現在。防御率2.06はリーグトップ、勝ち星が2位(8勝)、奪三振(88個)が3位で、野茂にはけっして引けを取らないだけに、球宴での先発資格は十分といえるだろう。
日本では6度、球宴の出場経験がある田中。月間MVPに至っては、最多記録となる12度も受賞している。「こちらではなかなか取ることが難しい賞だと思いますけど、これから何回も取れるように頑張っていきたいです」と快投を誓った田中が今後、どこまで登りつめるか想像もできなくなってきた。