高齢者世帯の資産は1400兆円以上。
これからは「老人が子供を養う」時代
藤原和博さん 撮影/(C)IHA
――「収入が上がりづらく、不動産などのレバレッジが効かない」35歳の若者世代にとって、お金の将来不安は尽きません。
藤原和博さん 今、一番お金を持っているのは誰か。それは、65歳以上の高齢者たちです。老人世代の資産は、約1400兆円ともいわれています。統計では、死ぬ時に1人1500万円から2500万円くらいのお金を残して死ぬ。これは、不動産を除いた現金のみの額です。お金がないのなら、お金のある世代に出してもらえばいい。つまり、親や祖父母の世代にパラサイトすればいいのです。
高齢者がなぜそんなにお金を持っているか。それは単に、「何かあったら」という“もしも”に備えているだけです。けれども、そのお金は誰かが使ってあげないと、国に召し上げられて無駄なことに使われてしまうだけ。それなら、孫や子供が有効に使ってあげるほうが、よほど親孝行だと思いませんか?だから遠慮なく「親や祖父母にパラサイトすればいい」と思います。
――親や老人世代に出してもらうことに抵抗感を持つ人も多いのでは?
藤原 そこはもう割り切って考えるべきです。やり方さえ間違わなければ、お互いが幸せになれる。生活はもちろん、キャリアアップや教育費など、意味のあることに使ってあげればいいのです。たとえば前回のホームエクスチェンジを使って(第3回目のインタビューを参照)おじいちゃんやおばあちゃんと一緒に旅行を楽しむのもいい。
昔は少ない老人世代を若い世代がみこし型で担いでいたけれど、少子化がどんどん進んで騎馬戦型になり、今は肩車や抱っこ型になったと言われています。でも僕は、それは間違っていると思う。これからは、老人が子供や孫を養う時代です。しかも、今の老人は非常に元気。65歳から70歳までの間に大きな病気をしなければ、たいていはその後も元気なまま長生きするケースが多いのです。日本を救うのは、この世代の資産でしょう。
パラサイトが恥ずかしいとか、旧来型の価値観に縛られるのではなく、使いようがないお金を貯めているんだから、孫や子とウインウインの関係になるような素晴らしい企画をプレゼンして、堂々と使ってあげるべきだと思います。
★次に住居費を下げる方法について、おうかがいします
教えてくれたのは……
藤原和博(ふじはら かずひろ)さん
教育改革実践家/杉並区立和田中学校・元校長/元リクルート社フェロー
1955年東京生まれ。78年東京大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任後、93年よりヨーロッパ駐在、96年同社フェローとなる。2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長を務める。08年~11年、橋下大阪府知事の特別顧問、14年~佐賀県武雄市の教育政策特別顧問に。キャリア教育の本質を問う[よのなか]科が話題に。詳しいプロフィールはホームページにて「よのなかnet」http://yononaka.net
『人生の教科書[よのなかのルール]』『人生の教科書[人間関係]』(ちくま文庫)など人生の教科書シリーズ、ビジネス系では『リクルートという奇跡』、情報編集力の本質を和田中での改革ドキュメントとともに解説した『つなげる力』(ともに文春文庫)、『35歳の教科書―今から始める戦略的人生計画』『藤原和博の必ず食える1%の人になる方法』など著書多数。最新刊はコミュニケーションと対人関係が苦手な日本人のための手引き『もう、その話し方では通じません』(中経出版)。
取材・文/西尾英子