1年間で世帯の金融資産は4.9%の増加
皆さんの中には、周りの人に惑わされず我が道を行く人がいるかと思いますが、貯蓄を長く続けていくためには、目標(目的)が必要なのは言うまでもありません。同時に、周りの人がどの程度貯めているのかを知れば、もっと頑張ろう、とりあえず平均並み、平均を上回っていて安心、と判断材料にもなるはずです。そこで、2014年5月16日に総務省から発表された家計調査報告(貯蓄・負債編)、平成25年(2013年)平均速報値、2人以上世帯からどのくらいの金融資産を保有しているのかを見ていくことにしましょう。
2013年平均の2人以上の世帯の貯蓄現在高(平均値)は1739万円で、2012年と比較して金額で81万円、増加率は4.9%になりました。平均値なので、どうしても一握りの高額保有世帯が数値を引き上げてしまう傾向があるため、中央値も見てみます。
貯蓄保有世帯全体を2分する中央値(金額の低い世帯から高い世帯へと順に並べ、ちょうど中央にあたる世帯の値)は1023万円で、2012年と比較して22万円、増加率は2.2%となっています。中央値に方が、生活実感に近いと言えるかもしれませんが、皆さんの家計はどのくらいの金融資産が増えたでしょうか?
ただし、ここまでに記載した数値はリタイア世代を含めたものです。わが国の金融資産保有額等のデータをみると、高齢世帯に偏っていることがわかりますので、勤労者世帯の状況も見てみることにします。
勤労者世帯は増加額、増加率共に低め
勤労者世帯(2人以上の世帯に占める割合は51.3%)については、貯蓄の平均値は1244万円で、2012年と比較して11万円、増加率は0.9%でした。貯蓄保有世帯の中央値は735万円で、2012年と比較して22万円、増加率は▲2.9%となっています。全体の平均値と比較すると、勤労者には厳しい1年だったと言えるのかもしれません。しかしながら、年間収入は708万円で、2012年と比較して17万円、前年と比較して2.5%の増加となっています。勤労者世帯に関しては、多額の金融資産を保有している世帯は資産を増やした半面、中央値近辺の世帯以下はあまり資産を増やせなかったと言えるのかもしれません。その差は、金融資産の内訳、言い換えるとどんな金融資産を保有していたのかによると考えられます。
その前に、2人以上の世帯について貯蓄現在高階級世帯の世帯分布をみると、平均値(1739万円)を下回る世帯が68%(2012年は67.2%)と約3分の2を占め、世帯分布は貯蓄現在高の低い階級に偏っていることがわかります。アベノミクスの効果は、持つ物と持たざる者の差を大きくしたのかもしれません。
ただ、貯蓄現在高が最も少ない100万円未満の階級が、2人以上の世帯に占める割合は10%となっており、2012年の10.6%より0.6%低下。このうち勤労者世帯でも、100万円未満の階級が勤労者世帯に占める割合は12%で、2012年の12.8%より0.8%低下していることから、一概に持つ物と持たざる者の差をアベノミクスが拡大したとは言いきれない可能性があります。
有価証券が大幅に増加している
2012年と比較すると、定期性預貯金は、2人以上世帯では同水準となっていますが、勤労者世帯に限ると減少しています。通貨性預貯金は、2人以上世帯、勤労者世帯共に増加となっており、特に勤労者世帯では調査を開始した2002年以降11年連続の増加となっています。低金利の長期化から、定期性預貯金と通貨性預貯金金利に差がなくなっているため、運用を諦めて何もしない人が多いことがうかがえます。また、生命保険なども2人以上世帯、勤労者世帯共に増加となっています。保証の見直しが進んでいるにも関わらず増加しているのは、保証よりも個人年金や一時払い終身保険の加入が増えたのではないかと推測します。
有価証券は、アベノミクス効果により株高が進行したことから、2人以上世帯、勤労者世帯共に増加していますが、特に2人以上世帯では24.4%と大幅な増加となっています。勤労者世帯よりも高齢者2人以上世帯の方が金融資産額が多く、また有価証券の保有も多いことから資産運用に限っては、実はリタイア世代の方がアベノミクスの恩恵をより享受しているのかもしれません。
今の高齢者世代は公的年金等を含め勝ち逃げ世代とも言われているうえ、資産運用も上手にこなしているようですから、現役世代は頑張らなければなりませんね。
皆さんの資産運用の状況はいかがですか?たまには、他の世帯がどんな状況なのかを把握して励みにしてはいかがでしょうか。