電子商取引取扱高で世界最大のアリババが米国へ上場申請
電子商取引取扱高で最大手(オンライン及びモバイル取引で世界最大)業者であるアリババグループ(阿里巴巴集団)が米国での新規株式公開を申請しました。現時点で公開価格、株式数、調達金額、上場先(ナスダックかニューヨーク証券取引所か)、そして銘柄コード(ティッカー)すらも不明です。しかし、約1,600億円を調達したフェイスブック(FB、時価総額15兆円)級の大型IPOとなる見込みで、上場後の時価総額は株価次第ですが、恐らく15兆~20兆円程度になると見られます。ちなみにeコマース最大手のアマゾンの時価総額は13.5兆円、世界最大の小売店ウォルマート(WMT)で26兆円、また日本の同業にあたる楽天は1.6兆円ほどです。また上場時の調達金額で過去最大だったのは2008年VISA(V)社の1,800億円でした。従ってアリババは調達資金額でも、時価総額でも上場した瞬間としては、過去最大の企業になる公算大ということになります。
インターネット黎明期の中国において先行し、巨大化
アリババは英語教師だった馬雲(ジャック・マー、49歳)会長が1999年に浙江省杭州市の小さなアパートの一室でB2B(企業間取引)のAlibbaba.comを設立した所から始まりました。その後、2003年にはタオバオ(淘宝網)という有名なマーケットプレイスの運営が開始されました。同社はインターネット時代を見越したという先見の明によって大きくなってきた会社という印象です。アマゾンやグーグル(GOOG)、フェイスブックのような仕組みや革新性に優れたものは感じません。アリババはソフトバンクとヤフーから大きな資金を取り入れ、相当早い時期からeBayのような事業を運営してきました。インターネット黎明期の中国において先行者優位と資金力の優位性が大きかったと思います。ちなみに米ヤフーがシリコンバレーの従業員数十名の小さなベンチャー企業だったところから大きくなったのも、ソフトバンクが突如巨額の資金を投入したことが最大要因だったと思います。当時は米国のネット黎明期でした。ネット黎明期に同じような事を考えていた米国・中国のベンチャー企業は多かったと思いますが、資金力のあるところが(買収等によって)アイデアを一気に実現できたものと思います。米国は何もないところからアイデアや仕組みを作る必要ありましたが、中国の場合は米国でうまく行っているネット企業を模倣すれば良かったのです。
馬会長自身にインターネットの専門知識やキャリアや、MBAや会社運営の経営知識・キャリアもなく、元々観光ガイドで英語の通訳をしていた人でした。ただカリスマ的な性格を有する人物であり、これによって各分野の専門性のある人材を惹きつけて採用し、その後も優れた人材マネジメントを行って会社を大きくしてきたものと思います。なお、馬氏は昨年の長年勤めたCEOを生え抜きの同僚に譲り、自身は会長に退いております。なお、上場前のアリババ社株主構成を見ると、1位ソフトバンク 34.4%、2位米Yahoo! 22.6%、3位馬会長 8.9%となっています。米ヤフーの持ち分に対してはアリババが上場後に半分を購入する権利を持ちます。
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