新たな株式を保有しないリスクが
日本の株式市場が軟調に推移していることから、NISAが始まったとはいえ、資産運用に慎重にならざるを得ない状況です。物価は上昇しているものの、平成26年は年収増が期待されていることから、少しホッとしている面があるのかもしれません。しかしながら、日本人として日本の会社の株式を保有して資本家にならなければ、将来的な収入増を描くことは難しくなりそうです。
これまで株式等を保有していない(投資をしていない)リスクと言えば、そのほとんどは資産を増やすことができないリスク、あるいはインフレ(物価上昇)リスクに対処できないことを指していました。しかし、21世紀に入ってからはこれらのリスクのほかに「内部留保を受け取れないリスク」あるいは「収入減を補えないリスク」が株式の保有に付加された気がしてならないのです。
下記の図は国税庁が毎年公表している民間企業の平均給与額の推移です。平成24年までしか公表(平成25年分は今秋公表予定)されていませんので、足元の状況とやや異なるので長めの視点で捉えてください。平成12年から平成24年までの12年間で金額が53万円、率にして11.5%給与が減少していることがわかります。余談ですが、今年度15年振りの賃上げとは言っても、長い目で見ればうれしさも半減です。
やや強引な見方をすれば、日本という国を1つの会社と考えれば、売上げに当たる国内総生産(GDP)が増えていないから仕方のないことかもしれません。しかしながら、景気があまり良くなかった平成24年3月期決算を対象とした「金融を除く上場企業の100社強」は過去最高益を更新しているのです。平成26年3月期はかなりの企業が過去最高益を更新しているでしょうから、過去から見れば給与をカットしすぎ、直近では賃上げが低すぎと言えるかもしれません。
利益は株主へ流れる仕組みに
給与が増えない理由は多々あると考えられますが、企業は従業員へ利益を還元するよりも、株主へ利益をより還元するスタンスに変化したことがあげられます。しかも、当期の利益が芳しくなくても、内部留保を取り崩してまで株主へ利益還元しているのです。かつて配当金は「利益配当」と言われていたように、当期の利益から株主へ還元されていましたが、商法の改正により内部留保などを取り崩して配当金として還元できる「剰余金の配当」に変わっているのです。いくつか例をあげると、平成23年3月期決算で約7720億円もの赤字決算となったパナソニックは、大赤字にもかかわらず配当金を1株当たり10円も払っています(しかも前期と同額)。パナソニックが大赤字を出した同年、シャープも大赤字でしたが1株当たり10円(前期より7円減額)の配当金を支払っているのです。
配当金の支払いがどのくらい増えたかは、TOPIX(東証株価指数)のETFを利用して調べて見ました。どのETF選ぶかで差が出ることから、野村アセットマネジメント、大和証券投資信託委託、日興アセットマネジメント3社のETFの平均値としました。
ETFは平成13年に上場されたので比較期間が異なりますが、初めて分配金が支払われたのは平成14年の決算期で259.33円だったものが、平成25年には1592.67円、金額にして1333.34円、率にして6.14倍にも増えているのです。前期(平成26年3月期)はかなりの企業が増配したことから、ETFの分配金は過去最高額に増えるかもしれません。
株式等を保有しないということは、頑張って働いたご褒美はせっせと株主への貢ぎ物となっていると言えるのかもしれません。これまで、株式等を保有することは、キャピタルゲイン(売却益)を得るのが主たる目的でしたが、これからはインカムゲイン(配当)を得ることも重要度が増すことになるのです。
株式等を保有していないことは、他人の懐、正確には株主である資本家の懐を温かくするために働いているようなもの。少しでも自分への褒美を増やしたいなら、最低単元でもいいから株主=資本家になることを検討してみてはいかがでしょうか。
※ETFの分配金は100口当たりの平均金額です