サイ・ヤング(最優秀投手)賞も見えてきた!
メジャー史上最速となる401回2/3での大リーグ通算500奪三振という記録も打ち立てた。
この日のキーワードは、とにかく“三振”だった。一回、1番・デへススの見逃し三振に続き、昨季ア・リーグ新人王に輝いたマイヤーズから空振り三振を奪い、大リーグ通算500奪三振を記録。しかも、401回2/3での達成は、2001年のケリー・ウッド(カブス)の404回2/3を抜くメジャー史上最速である。「それだけ健康に投げてきた証拠なので、良かった」というダルビッシュだが、この日はこれからが圧巻。二回無死一塁からジェニングスら好打者を3者連続の3球三振に仕留めたのだ。結局、7回を89球で終える省エネ投法で今季初白星をものにした。
「あんなにバンバン決まるとは思っていませんでした。2ストライクに追い込んだら、勝負に行くのが自分のスタイルなので、遊び球はなし。それがうまくはまった」
ダルビッシュは2012年に221個、ア・リーグ最多奪三振のタイトルに輝いた昨季は277個の三振を奪ったが、三振を奪うたびに球数が膨らんで交代が早まった事実がある。エースとしては球数を減らし、少しでも長いイニングを投げなければならない。そこで3年目の今季、ストライクを積極的に取りにいくことと、変化球でかわすのではなくてストレート中心で攻めることを課題とした。
この取り組みがいきなり実った。テキサスの地元紙スターテレグラムは、この日のストライク率が73%と、これまでに最も高かったことを紹介。昨年のストライク率の平均が62%だったことと比べれば、驚異的な伸びを示した。
また、同じく地元紙ダラス・モーニング・ニューズは、「昨年はストレートの割合が38%で、メジャーの先発投手81人中79位と低く、ストレートを使いづらそうにしていたが、この日は自信を持って制球していた」とその“進化”を認め、「新たなレベルに到達したシーズンが始まった」と絶賛した。
ヤンキースの田中将大投手が4日(同5日)のブルージェイズ戦(トロント)で、メジャー初先発初勝利を挙げたことが、刺激になったことも間違いない。田中の今季年俸は2200万ドル(約22億7000万円)。一方、ダルビッシュはその半分以下の1000万ドル(約10億3000万円)だ。ツイッターなどでジョークを言い合う仲だが、後輩に対するメジャーの先輩の意地が、7安打されても7回を無失点に抑えた投球に表れていた。
「3週間も投げていなかったのに、実力をしっかり見せてくれた。ストレートはよく制球されていたし、変化球は切れていた」とワシントン監督。「出来過ぎ。これだけ投げていなくても7回も投げられたので良かった」とホッとした表情を浮かべたダルビッシュ。この内容でのスタートなら、2年連続のア・リーグ奪三振王と取り損ねたサイ・ヤング(最優秀投手)賞が見えてきてもおかしくない。