お金と仕事、どうサバイバルする?エコノミストインタビュー
4月に入り、いよいよ消費税が8%になりました。さらに来年の10月には、消費税率は10%になる見込み――。税率アップに物価上昇……相次ぐ負担増にさらなる家計の引き締めは必須です。すでにやりくりに頭を悩ませている人も多いのではないでしょうか。厳しい時代を軽やかに生き抜くためには、どんなスキルを身に付け、お金とどう付き合っていけばいいのでしょう。そのためのサバイバル術を専門家にレクチャーしてもらいます。第1回目は、第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生さんに、2014年の景気の動向と雇用の状況について話を伺いました。増税で支出が月6000円アップ!夏ボーナスには期待できる?
第一生命経済研究所 首席エコノミスト熊野英生さん
熊野 2013年の総務省「家計調査」によると、消費税3%分の負担額は1世帯あたり年間8万2277円。月にすると6856円の負担増になります。20代では約5000円、30代で約6000円、40代で約7000円月の支出が増えることになります。(図表を参照)
――家計にとっては厳しい状況が続きそうですね…。収入は増えないのでしょうか?
熊野 ただ、主要企業の業績改善により、今年の春闘では主要企業が軒並みベースアップを決定していますし、大企業の夏のボーナスは期待できそうです。業績好調な各社は、平均で一時金の支給額を年間5.19ヶ月分(4月1日時点)も引き上げることで妥結しました。実現すれば、ここ15年くらいの間で最もボーナスが上がることになりますね。
――多くのサラリーマンが勤務する中小企業はどうでしょう?
熊野 まだ大企業の賃上げの影響は及んでいませんが、経済のメカニズムを考えても、景気が浮上する時に大企業だけが上がるということはありえません。事実、中小企業へのアンケートを見ても「状況が良い」と答えるところが多くなっています。タイムラグはあるでしょうが、ここ1~2年くらいで徐々に中小企業の昇給も伸びていくのではと思っています。とはいえ、実際問題として、給料が上がる会社に入らないと収入は増えませんから、増税で家計が厳しさを増すことには変わりはないのですが…。
株価は1万7000円、為替は105円を予想
――株で収入アップを目指す人もいると思いますが、アベノミクスによる相場もひと息ついた感があります。今後の為替や株式市場の今後をどう見ていますか?熊野 2012年末から始まった日銀による金融緩和政策、アベノミクスは、ある意味「ラッキー」だったといえます。半分はアベノミクスの実力だとしても、あとの半分はアメリカの景気回復等に引っ張られた部分が幸運だった。ただし、2014年はアメリカの金融緩和縮小、ウクライナや中国など外部環境の変化もあり、アベノミクスが再び盛り返すかどうかの正念場にきています。海外投資家から1年に15兆円超のお金が入り込んだ2013年のような状況を再現することは難しいでしょう。“もっと金融緩和を続ければ再現できる”という声もあるけれど、それは希望的観測だと思いますね。
―― 2014年の株式相場をどう予想しますか? まだ投資を続けても大丈夫でしょうか?
熊野 増税前の駆け込み需要などもあり、さしあたって出てくる決算の数字は良いはずです。株価は基本的には決算次第ですから、株式投資に関して5月くらいまでは強気でいいと思います。ただし、増税の影響で4~6月の企業収益は弱いでしょうから、夏から秋にかけてはいったん様子見といったところでしょうか。しかし、先ほどお話したように夏のボーナスアップで消費もやや盛り返すと思いますので、企業業績が上がり、株価も回復してくると思います。予想としては、年内に1万7000円、為替105円くらいと見ていますが、増税時に企業収益の予想はなかなかしづらいのが事実。やや慎重に見ていく必要があるでしょうね。
★第2回目は、引き続き熊野さんに、「サバイバルできる人」になる方法をおうかがいします!
教えてくれたのは……
熊野 英生(くまのひでお)さん
第一生命経済研究所 首席エコノミスト。専門は、金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。日本銀行を経て第一生命経済研究所へ入社。著書に『3時間でつかむ金融の基礎知識』や『バブルは別の顔をしてやってくる』など。
取材・文/西尾英子パネルデザイン/引間良基