生前贈与と納税資金対策
多額の相続税が発生する場合は、子や孫にとって納税資金の準備が必要です。生命保険は、保険料負担者である契約者と受取人を子ども、もしくは孫、被保険者を親として契約すると、受け取る死亡保険金は相続税の対象にならず、一時所得として所得税の対象となります。
親が、子どももしくは孫に、保険料にあたるお金を贈与し、子や孫が保険料を払います。このとき、毎年一人当たり110万円までは非課税となります。
子どもが2人いて、それぞれに110万円、年間220万円で10年払いの終身保険に加入したとします。2200万円の財産が親から子に移ることになり、実際に親が亡くなった時に受け取る保険金は一時所得として、相続税より低い税率で受け取ることが可能となります。現金での贈与と異なり、生命保険の場合は解約しなければならないため、贈与した現金がしっかりと残り、計画的に準備できる大きなメリットもあります。
利用する生命保険は、貯蓄性の高い終身保険、養老保険、掛け捨ての定期保険などが候補になります。どれを選ぶかは、準備期間や金額などを含めて検討する必要があります。
預金口座は被相続人の死亡後に凍結されるが、生命保険はその心配がない
現預金は被相続人の財産になるので、遺産分割の対象となります。相続人の遺産分割協議が無事終わり、手続きを経るまでは口座凍結といって、お金が下せなくなってしまいます。死亡届を提出するまでは凍結されない、と考えている方も多いかもしれません。実際は、金融機関がその事実を知った時点で、被相続人の口座にあったお金は下せなくなってしまいます。
一方、生命保険金は、死亡届をもって受取人に支払われるために、凍結の心配はありません。葬儀代などの資金としても役割を果たしてくれます。
生命保険を活用するには1日も早い行動が必要
とはいえ、生命保険は万能ではありません。一部の商品には職業のみの告知で加入できる死亡保険もありますが、基本的には健康状態が良好であることが加入の条件です。健康状態はある日を境に大きく変わります。たとえば、今日が元気であっても、明日は脳梗塞で倒れて患者になる可能性があります。脳梗塞になると生命保険に加入できなくなり、生命保険という有効なツールが使えなくなってしまいます。そうならないために、相続対策は1日も早く取り掛かる必要があります。