テーパリング開始にも関わらず、商品価格が上昇
年初来の資産別騰落状況を見ると、ナスダックはいち早くプラスに浮上したのですが、全体に株は不調、そして意外にも資源商品関連が好調となっています。特に貴金属価格が昨年末の安値を底に大きく反発しています。不可解なのは、米国のFRBが金融緩和政策の縮小(テーパリング)に入ったにも関わらず商品相場が上げてきているという事です。通常、金融緩和政策の縮小はドル価格上昇を示唆し、ドルで取引される商品価格にとっては相対的に逆風であると考えられているからです。2013年はFRBの金融政策が歴史的な大転換を余儀なくされる年として、年初からテーパリング入りが一大テーマとなっていました。2009年3月のFOMCで決定したQ1(量的緩和第一弾)から始まって順次Q2、Q3へと進み、いよいよ超緩和策を解いて通常化に戻す(テーパリング)と、一体市場はどうなるのかに注目されたのです。
その結果、2013年は先進国株式市場は空前の上昇相場となった一方、確実に2013年年末からテーパリングが始まることを見込んで商品価格は全般的に1年前から大幅安となっていました。
テーパリングが始まっていなかった(まだお金が充分溢れている時点)にも関わらず、噂で商品は下がったことになります。そして事実が出た(12月18日のFOMCで初のテーパイング決定)時を境に商品は底をつけ、2014年1月29日のFOMCで2段目のテーパリングが粛々と決定されると(累計200億ドルのマネーフローが縮小された)、商品は大きく上昇していきました。
お金が絞られるからといって散々下がって来たものが、実際に絞り出された瞬間から上がり出したのです。1月29日は新興国通貨不安を無視するかのようにFRBが粛々とテーパリング第二弾策を発表したことでダウは190ドルも下がり、米国株は下落転換しました。その一方で、天然ガス価格がこの日10%飛び跳ね、金価格も11ドル以上上昇したのです。
FRBの政策に最も敏感な貴金属は特に上昇目立ちます。前述のように、テーパリングは資源価格にとって逆風である(と、2013年まで考えられていた)にも関わらず、銀価格や金価格は大幅高となっています。上の表は36種の商品先物価格の総合指数(右下図)と、その中から農産物(左上)、油やガスなどのエネルギー(右上)、金属(左下)に分けた1年チャートです。原油価格が100ドルに戻す中、綿花、ココア、大豆、天然ガス、コーヒーなどの価格も年初から上げてきています。別の商品先物総合指数であるCRBのチャートは久しぶりに200日移動平均線を越えてきました。
資源価格高騰の原因は新興国からの投資資金の流入か!?
2013年に上げていた株価に対する見方は、テーパリングが開始されるということは、そこまで充分に経済が回復している証しであり、今後は景気・業績回復を反映した業績相場に発展するというものでした。欧州圏の2013年第4四半期GDPは久々にプラスとなり、独仏を中心に予想以上の回復です。欧州圏は相場の良かったこれまでの約2年間、リセッションに陥っていたのです。一方、良かったはずの米国は、雇用統計がこのところ連続して冴えず、1月米国小売売上は前月より-0.4%で期待を裏切り、12月発表分も下方修正、さらに鉱工業生産の1月はサプライズといえるほど弱い結果であり、特に製造業については3年で最低のマイナス幅を記録しました。イエレン新FRB議長は公聴会で証言し、低金利を据え置く一方、テーパリングについては粛々と進めて行く、但し雇用とインフレの様子を見ながらとしています。投資家は米国のテーパリングは無情に、淡々と進められると見ています。その証拠に米国長期債利回りは1月29日のFOMC以降、徐々に上がってきています。そして新興国で起きている通貨・インフレ・景気後退等の不安にFRBはお構いなし、と投資家は判断し、1月29日のFOMCが開催された週に64億ドルもの資金が新興国株式ファンドより抜け出ました。これは2年半で最大規模です。もしかすると、リスクを嫌って新興国から抜け出た投資マネーが行き場を失い、下がるはずだった金などの実物資産に向かっているという筋書きが考えられるのかもしれません。商品はインフレ懸念へのヘッジともなりえます。インフレとは物の価格が紙幣の価値より上昇することなので、物を買って持っておけば良いという考えです。
現時点で上述のような考えは極めてマイナーです。一般的にアナリストからは悪天候のせいで経済指標がたまたま弱くなっており、株価も今のところ騰がっていないだけ。商品が上がることはテーパリングを考えればおかしなことであり、すぐにまた下がる、気候が良くなれば2013年と同じ構図に戻る(株高資源安)、という解説が聞かれます。1月までこの説が有力だと考えておりましたが、ここに来て呑気に構えている訳にはいかないほど変化の芽が勢力拡大しているのが現状です。
参考:グローバルグロースレポート
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