相続・相続税/相続・相続税の基礎知識

相続放棄をしたほうがいい!6つの事例

「相続放棄」と聞くと「亡くなった人の借金を引き継ぐのを回避すること」とイメージするかもしれません。しかし、これ以外にも相続放棄を利用したほうがいいケースがあります。反面、後から相続放棄を撤回するのは難しいため、慎重に判断する必要もあります。相続放棄のメリット・デメリットについて確認してみましょう。

小野 修

執筆者:小野 修

相続・相続税ガイド

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相続放棄は原則、撤回できないので慎重に判断を!

「相続放棄」という言葉を聞くと、亡くなった人に借金があり、それを相続人が引き継がなくていいようにする手続き、というのが一般的かと思います。これは亡くなった人が債務超過の場合には有効ですが、この理由以外にも相続放棄をしたほうがいいケースがありますのでご紹介します。

 
相続放棄は原則、撤回できない

相続放棄は原則、撤回できない



相続放棄は、相続の開始を知った日から3カ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。相続放棄をしてしまうと全ての財産・債務を放棄することになりますので、例えば自宅など、どうしても引き継ぎたいものがあれば相続放棄は現実的ではありません。何も相続をしない人で、以下のいずれかのケースにあてはまるなら、相続放棄をするほうがいいということになります。

なお、相続放棄は一度申請してしまうと、原則として撤回ができません。慎重に判断する必要があります。
 

ケース1:生命保険金と借入金がある

例えば、預金2000万円、生命保険金2000万円、借入金△5000万円だったとします。相続放棄をしないと、差し引き△1000万円を引き継いだ形になります。相続放棄をすると預金と借入金は放棄になりますが、生命保険金は受取人の固有の財産ですので放棄の対象になりません。結果、2000万円の現金が残ることになります。
 

ケース2:被相続人が債務の保証人になっている

知人の借入金の保証人になっている人が亡くなったとします。その保証債務も相続人が引き継ぐことになります。知人が完済してくれれば問題ありませんが、知人が返済できなくなった場合は代わりに返済することになってしまいます。

相続放棄をしていれば将来そのような状況になっても保証債務を引き継ぎません。なお、被相続人が誰かの保証人になっていたか不明な場合も、相続放棄をしていれば、もし誰かの保証人になっていたとしても安心です。
 

ケース3:相続人が債務超過

相続人Aさんは自身の借入金があり、かつ債務超過だとします。せっかく相続した財産もその債務の返済に充てられてしまう恐れがあります。債権者からすれば、貸し倒れの可能性を回避できる期待がありますから当然です。

Aさんはこれを逃れるために、遺産分割協議で何も相続しないことにしました。ですが、これでは相続できる財産を不当に減らしたことになりますから、債権者から遺産分割の取り消しを訴えられてしまいます。

この場合、相続放棄をすればそもそも相続人でなくなります。よって相続放棄をすれば何も財産を取得しなくても債権者からは訴えられません。

ここまでは財産を「守る」ための遺産放棄でした。これら以外にも相続放棄をしたほうがいいケースとは?
 

ケース4:遺産分割や名義変更などで、他の相続人と関わりたくない

何も相続しなくても、遺産分割の話し合いや名義変更の手続きで、他の相続人と関わらなければならないことが多くあります。その都度、実印を求められたり印鑑証明書が必要だったり。相続放棄をすれば相続人でなくなりますので、こういった煩わしさからは解放されます。
 

ケース5:被相続人が訴訟の被告

少しまれなケースですが、被相続人が被告として訴えられていた場合、その被告の地位も引き継ぎます。もし何も事情を知らない相続人がこの地位を引き継いでしまっても、裁判を継続することは実際のところ難しいでしょう。

この場合も相続放棄は有効で、相続人はこの裁判を継続する必要はありません。相続人全員が相続放棄をするとその裁判は被告がいませんから、結果として終了してしまうことでしょう。
 

ケース6:相続人を次の順位の人にする

例えば、被相続人が長男で独身(子どももいない)、家族は母と二男だった場合、何もしないと相続人は母ひとりということになります。長男の財産は3550万円で相続税の基礎控除内なので相続税はかからない。ですが母も固有財産が3450万円あり、将来、母の相続の際は二男が7000万円の相続をすることになります。そのため相続税がかかってしまう見込みです。

この場合は今回、母が相続放棄をしたとすると、相続人は次の順位の二男になります。その結果、長男から二男への相続でも相続税はかかりませんし、母の相続の際も、固有財産が3450万円のままであれば相続税がかからないことになります。
 

相続放棄から親族間のトラブルも

相続放棄をするうえで注意点があります。それは「相続放棄をすると次の順位の人が相続人になる」ということです。

こんなケースがあります。債務超過の被相続人Aの相続人は妻のBと子C。BとCがともに相続放棄すると、相続人はAの父と母になりますが、先に亡くなっています。そうすると相続人はAの兄D、弟のEになります。DとEにしてみれば考えてもいなかったAの借金を負う羽目になり、それ以来A家とD家・E家との間でもめごとに。親族関係が破たんしてしまいました。

いかがでしょうか? もちろん相続放棄は慎重に行う必要がありますが、利用方法によっては有効な手続きであるといえます。一方、相続放棄によって他の親族とのトラブルにつながる可能性もあります。相続放棄をする判断を3カ月以内に行う必要がありますから、相続放棄を考えている人は早めに専門家に相談することをおすすめします。

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