防災/災害の種類と対策

東京・静岡・大阪・兵庫の防災意識調査について

東日本大震災から3年。関東近辺ではいまだにその余震がときおり起きてはいますが、都民の防災に対する意識はどう変化しているのでしょうか。また阪神淡路大震災で大きな打撃を受けた兵庫・大阪、東海地震の危機を長きにわたって報じられてきた静岡、この4都府県において調査された結果について考察してみたいと思います。

和田 隆昌

執筆者:和田 隆昌

防災ガイド

株式会社オールアバウトが運営するマーケティング・チャネル「生活トレンド研究所」によるアンケート調査の結果をご紹介します。調査期間は2013年12月5日(木)~2013年12月11日(水)、東京都・静岡県・大阪府・兵庫県在住の20~59歳男女計2628名による回答です。


都民の防災意識は西よりも高い

グラフ1

グラフ1:「現在の「防災」に対する意識

4都府県で現在の「防災」に対する意識について調べたところ、東京/静岡と大阪/兵庫とではTOP2(「意識している」「やや意識している」)の差が1割程度あった(東京72.4%、静岡73.0%、大阪60.7%、兵庫63.2%)

東日本大震災以降、昨年、一昨年は余震も多く、首都直下型地震に対する政府発表も続いたため、数字の上では東京の防災意識は未だ保たれているかのように見えます。その点、東日本大震災で被害も受けておらず、被災経験のない静岡県の住民の意識の高さは地方都市としてはずば抜けて優秀で、自治体、各種団体の防災に対する活動、住民への働きかけが非常に活発で、継続的であることが表れています。対して関西地区は、実態的にも、住民の間にはもう阪神淡路大震災の記憶は20年近くたったことによって、防災意識は相当薄れていて、地域の防災活動などは全体に縮小しています。ただ2013年4月に淡路島で大きめの地震があったことで、意識だけは少し持ち直している可能性があります。


静岡県の他県との大きな違い

グラフ2

グラフ2:日頃行っている防災対策

日頃の防災対策は、東京/静岡は「備蓄」、防災グッズ」で他の2県よりもポイントが高かった。また、「地域の防災訓練への参加」について他の都府県に比べて静岡が突出して多かった。

東京の住宅事情から考えて「家具の固定」は地震対策の選択肢になりにくいことが考えられます(賃貸の場合など)。また東日本大震災発生後の物資の不足から一時的に備蓄に対する関心が高まっているのでしょうが、震災後に購入して、期限切れになった後に買い替えまでする人はごくわずかであることが予想されます。都市部では防災訓練自体どこでやっているか知らない、一度も参加したこともない人が多いのではないでしょうか。関西地区の「特に何もしていない」という率が大阪・兵庫ともに30%近くだったことも意識の低下を物語っていると思います。

対して、全国的に見ても、静岡県は最も自治体主催、および地域での防災訓練が活発に行われている地域であり、東海地震の危機が叫ばれ始めた1970年代より継続的に続けられています。その後、この数年の「南海トラフ巨大地震」の発生リスクに対する報道でまた危機意識が高まり、避難訓練への参加は多くの住民が体験していると思います。


防災意識と準備行動が異なる静岡

グラフ3

グラフ3:備蓄の程度

備蓄の量に関しては、静岡がほかの都府県よりも7日間分、3日間分いずれにおいて一番少ないという結果になった。

東京や大阪などの都市部では、地域住民全体で災害に対応するという意識が希薄なため、災害には個人(家族)で対応するしかないと思っている人が多いと思います。東日本大震災での経験も踏まえて、今現在は、まだ物資不足に対する危機意識が強い傾向を感じます。

静岡県の結果に関しては「意識している」ことと「実際に準備している」実態との違いが表れていて、地方都市に行って話を聞くと「いざとなれば隣近所で支えあう」「あるもので何とか間に合わせる」という人も多く、「備蓄」に関して用意していない人が多いように思われます。静岡の自治体の防災教育もこの数字を見るかぎり、少し防災訓練、避難訓練のみに偏っているのかもしれません。静岡は備蓄に関してももっと充足率が高いものと思っていたのでこの数字に関してはやや意外でした。

ただし、南海トラフ地震の対策として政府が昨年発表した「7日間分の水・食糧の備蓄が必要」については、負担が大きく、現実的にそれだけのものを用意できる人はごくわずかでしょう。ただし自宅の場合、冷蔵庫の中にあるものを被災後3日間の食事にあてて、残り4日分をいざという時の備蓄として用意するという考え方であればさほどスペースをとることもないでしょうし、さらにレトルト食品などを「ローリングストック」(古いものから消費して、減ったら加えていく)していけば定期的に中身を確認できますし、長期保存(3年~5年など)用ではない食品でかまわない、などのメリットもあります。


「避難時の安全確保」に必要なものを忘れずに

グラフ4

グラフ4:防災グッズで揃えているもの

備蓄、防災グッズで揃えているものは「水(86.4%)」、「懐中電灯(80.9%)」が多かった。

避難時に必ず必要になるヘルメット、マスク、雨ガッパなどがリスト上位に入らなかったのは残念です。特にマスクは避難所でも感染防止のために必要です。避難途中で倒壊家屋からの粉塵・煙などを防ぐためにも必ず用意しておきたいものです。

またお子さんのいるお宅では、少なくとも子供の分だけでもヘルメットを用意しておいたほうがいいでしょう。また避難時に雨が降っている場合、傘を持って歩くよりもフード付きの雨ガッパを使用しましょう。雨ガッパは安価でコンパクトですし、冬季には防寒具にもなりますので避難袋に人数分用意しておきましょう。また懐中電灯も必要なのですが、停電時に自動点灯する「保安灯」も寝室・廊下に装備しておきたいところです。


非常用持ち出し袋と備蓄は別に用意

グラフ5

グラフ5:備蓄、防災グッズの収納先

備蓄を置いてある場所については、玄関やキッチン、寝室などが多かった。

自治体などでは「非常用品袋」にある「備蓄」と長期避難用の「備蓄」それぞれをどこに置くべきなどという指示はあまり明確にしていないのが実情です。すぐに持ち出すための「非常用品袋」は玄関に、「備蓄」はキッチン、納戸など置けるところに分けておくのがよいかと思いますが、玄関付近におくべき「非常用品袋」の必要性があまり関西地区に広まっていないような気がします。東西の住宅事情が極端に違うとは考えられないので新しい防災教育を全国的に広める必要性を感じました。


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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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