放射線・放射能汚染・医療被曝/放射性物質・医療被曝の安全性・リスク

体内の放射性セシウム量は? 内部被曝検査の現状

福島原発事故後の住民の方々の内部被曝状況は、現在もホールボディーカウンターを用いて検査されています。検査自体の所要時間は2分程度で希望者は受けることができ、2013年末までに40万人ぐらいの方が検査を受けたと考えられています。今行われている検査の方法と流れについて解説します。

坪倉 正治

執筆者:坪倉 正治

内科医 / 血液内科・放射線被曝ガイド

今回は、福島原発事故後の住民の方々の内部被曝がどの程度と計測されているかについて、説明したいと思います。

内部被曝には、いくつか計測の方法がありますが、ここでは現在の福島県で主に使用されているホールボディーカウンターを用いた検査についてご紹介します。

現在も被災地で行われている内部被曝検査

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南相馬市立総合病院では2011年の7月から検査を始めましたが、最初の器械は鳥取県からお借りしたものでした。

ホールボディーカウンターとは、体内に取り込まれている放射性物質の量がどれほどかを計測する器械のことです。これを用いた内部被爆検査は、震災の年である2011年の6~7月から、専門機関、自治体や病院で行われるようになりました。

当初は避難地域となった自治体の住民から順番に検査が進み、各地区でばらばらに検査が行われていましたが、2013年現在では大まかには各市町村が主体となり、いくつかの医療機関や保健センターなどで検査が行われています。

相双地区で例を挙げると、南相馬市では南相馬市立総合病院と渡辺病院にホールボディーカウンターが設置され、各個人は希望に応じて保健センターに連絡することにより検査を受けることができます。小中学生に関しては、学校検診として検査が組まれており、小中学校ごとに病院に集まり、定期的に検査を受けている状況です。大人に関しても、希望者はある一定の期間をおいて、複数回の検査を受けることができます。相馬市も、相馬中央病院と、公立相馬病院に設置された器械で、学校検診と、個人の希望者の検査が行われています。保健センターに電話予約を行ったり、検査受診希望の書類を送ることで検査を受けることができます。正確な統計がありませんが2013年末までに、40万人ぐらいの方が検査を受けられたと考えられています。

実際の放射線内部被曝検査の方法・流れ

検診者はまず身長体重を計測します。その理由は、ホールボディーカウンターによって、体内の放射性セシウムや放射性カリウムを計測した後、それらを体重あたりいくらになるのか計算し、身長が小さい子供(130cm以下)の場合には計測の際に台を用いる必要があるためです。

その後、日常生活に関する問診票を記入してもらっています(これは、全ての検査施設で行われているわけではありませんし、施設によって異なります)。どのような食生活をされている方の内部被曝が多いのかを出来るだけ早く調べるためです。詳しくは検査結果の時にご説明しますが、小さい子供であればあるほど、県外産の食品を選んだり、地元産のものを避けたりされる方が多い状況は2013年でも続いています。

着替えの後、体表面が放射性物質により汚染されていないかをガイガーカウンターでチェックします。下着はそのままですが、上着や靴下などは脱いでもらいます。体表面が放射性物質によって汚染されている場合は、器械が体表面の汚染を、体内に存在する汚染と勘違いしてしまい、内部被曝を過大評価してしまうためです。

その後ホールボディーカウンターの中に入っていただき、検査を行います。検出器と遮蔽板の間はやや狭い空間ですが、立っているだけで検査自体は2分で終了します。来院から検査が終了するまで約30分の時間ぐらいでしょうか。

内部被曝検査でわかること

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椅子型ホールボディーカウンターの一例

ホールボディーカウンターは原発災害によってまき散らされた放射性セシウムが体内に無いかを主に計測しています。事故直後であれば、放射性セシウム以外の放射性ヨウ素やその他の短い半減期の核種が存在していましたが、その数ヶ月後には、事故の影響を及ぼす主たる被曝の原因は、放射性セシウムとなります。現在の食品汚染のリスクや、空間線量率が上昇する原因は主に放射性セシウムであり、ホールボディーカウンターは、その放射性セシウムが体内に存在する場合、体内から発せられる放射線をキャッチし、逆に体内の放射性セシウムの量を計測しています。

いくつかの種類の器械があり、椅子型のものや、立ったままで計測できるものなど、性能も少しずつは異なります。いずれもだいたい2~3分間の計測で、体全体に放射性セシウムが250~300Bq/bodyぐらい以上含まれているようなら、器械が検知できるというタイプのものが多いです。

さて次回はこれらの検査結果と、この検査によってわかってきたことと、未だ分かっていないことについて、ご説明したいと思います。
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