電子書籍/電子書籍業界動向

2013年・電子書籍業界を振り返る5つのトピック

サービスの終了や業界再編、スマホ展開といろいろあった2013年の電子書籍業界。「Raboo終了」「LINEマンガ開始」「スマホアプリ続々リリース」「iBookstoreオープン」「出版デジタル機構とビットウェイの合併」という5つのトピックで振り返ってみました。

執筆者:上村 充弘

色々話題のあった2013年

2013年の電子書籍業界は、サービスの終了や業界再編、スマホアプリの普及とたくさんの話題がありました。そんな一年を振り返り、特に注目を集めた5つのトピックをピックアップしてみました。

3月31日Raboo終了

raboo

Raboo終了のお知らせ

以前に記事も書きましたが、楽天のRabooという電子書籍サービスが終了しました。業界へのインパクトとしては、電子書籍サービスとは未来永劫続くものではなく、統廃合がありえる事にユーザーが気が付いた、ということがあるのではないでしょうか。

特に今回のRaboo終了にあたっては、購入した電子書籍を他の電子書籍サービス(例えばkobo)に引き継げないため、「電子書籍を購入するということは、一体何に対価を支払っているのか?」という疑問を投げかけた出来事でした。2014年は廃止されるサービスが無いことを祈ります。

4月9日LINEマンガ開始

LINEマンガ

LINE マンガ

4月9日、「LINE マンガ」がはじまりました。LINE マンガがはじまった時の記事で「電子書籍の本命」と書きましたが、聞こえてくる範囲では「好調は好調だが、ビジネス的にはまだまだ」というところのようです。LINEのユーザー層に中高生が多いことを考えるとまだまだ電子書籍への敷居は高いのでしょうか。

7月に月商2億円くらいでは?と推測しましたが、聞こえてくる範囲では月商2億円の壁は突破したようです。今後コミックの売上はLINE マンガが牽引していくと思われますが、ユーザーにとっての「買いやすさ」をもう少し追求して欲しいと思います。

スマホアプリ続々リリース

koboアプリ

koboアプリ

今年は専用端末を展開している書店がスマホアプリ対応によって専用端末以外での収益化を模索した年でした。各取次さんや出版社に聞いたところによると、特に楽天のkoboはスマホアプリをリリースしてからの売上が毎月すごい勢いで上がっているとのこと。SONYも2012年にAndroidアプリ、そして今年10月3日のiOSアプリとスマホ対応を進めており、スマホアプリリリース後、ラノベやコミックの売上が大きく伸び、ユーザー層も広がったという話を聞いています。

やはり日本では専用端末でじっくりというより、スマホでスキマ時間にコミックやラノベを読むという読み方が多いように思えます。

2014年もスマホと電子書籍をどう融合させていくか?が電子書籍市場発展のキーワードになってくると思います。

3月9日iBookstoreオープン

iBookstore

iBookstoreのTOP画面

3月9日、いつ来るか?と期待されていた「iBookStore」がオープンしました。

海外ではiBooksでの読書体験が一般化しつつある中、なかなか日本語の電子書籍が販売されていなかったiBookstoreが、ついに日本語の電子書籍を販売開始したのです。KindleやGooglePlayBooks、楽天koboなど海外勢が2012年中に参入した中、最後発での参入でしたが、さすがのインパクトでした。

iBookstoreは他の電子書籍サービスと違い、iPhoneやiPadユーザーなら端末購入時に必ず作っているAppleIDを利用するため、電子書籍購入の大きなハードルである「会員登録」というステップが不要で、ユーザーの利便性が非常に高くなっています。

今後iBookstoreはマルチメディアコンテンツ(動画や音声など文字情報以外の情報が入った電子書籍)を中心としてさらに発展していくと思いますし、オールアバウトも2014年はマルチメディアコンテツをiBookstoreへ配信していく予定です。

出版デジタル機構とビットウェイの合併

今年最大の話題はなんといっても「出版デジタル機構とビットウェイの合併」ではないでしょうか。ビットウェイはもともと凸版印刷系の電子書籍取次会社で2010年の電子書籍元年以降、新しい電子書籍サービスへの取次として確固たる地位を築いてきました。
ビットウェイ配信先

ビットウェイの配信先2011年12月時点

そのビットウェイが3月に会社分割を行い一部をBookLiveと合併、取次部分を新会社ビットウェイとしました。その後、出版デジタル機構がビットウェイを凸版印刷から買収を行って子会社化し、10月1日に出版デジタル機構がビットウェイを合併して現在に至ります。
出版デジタル機構

出版デジタル機構のお知らせ


業界再編といえば聞こえがいいですが、電子書籍マーケットが業界の期待ほどに拡大していない、ということを示す合併であったのかもしれません。

紙の本であれば、実売数が集計され公表されていたりしますが、電子書籍の場合、各書店がダウンロード数を公表していないため、実際市場規模がいくらか見えにくくなっており、各書店に個別取材などで売上を聞いてそれを集計することでやっと見えてくる状態です。

市場規模が広がっているという話はよく耳にしますが、2010年をピークに盛り上がったガラケー向けの電子書籍配信の時のように儲かったという話が聞こえてきていません。「売上が上がっている」ということだけ叫ばれている状況で、予想以上に収益化出来ず、売上は上がるが利益が出ないという構造から抜け出せていないということでしょうか。特に電子書籍専業でやっているところは厳しいと想像します。

そんな中での出版デジタル機構とビットウェイの合併は、厳しい中での選択だったのではないかと考えています。

まとめ

最初に上げた「Rabooの終了」と最後に取り上げた「ビットウェイと出版デジタル機構の合併」と合わせて、実は「電子書籍業界の再編」というのが今年最大のテーマだったと考えています。

ガイド個人的には、来年はkoboが日本市場に向けて楽天ブックスや他の楽天のサービスと強力に連携し、よりユーザーフレンドリーなサービスに成長するのではないかと考えています。そして、参入時に色々言われた楽天koboはRabooの失敗を糧に大きく成長すると予測しています。

日本市場にガラパゴス化は付き物と言われていますが、電子書籍はガラパゴス化することで逆に良い意味で世界の最先端を進む可能性が有ります。Kindleとkoboどちらがより柔軟に日本市場に適合するか?を考えた時にガイドはKindleよりも、国内企業で日本を熟知した楽天のkoboにより可能性があるのではないかと考えています。

来年は閉鎖するサービスが無いことと、電子書籍業界のさらなる発展を祈りつつ新年を迎えたいと思います。
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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