世界の超一流選手がズラリ。この10年で劇的な進化を遂げたトップリーグ
トップリーグは昨シーズンで設立から10年目となりました。その間、プレーの質に関しては一般的に人気のある大学ラグビーや高校ラグビーに比べ劇的に進化しており、リーグとしての成長率は驚異的といえるほどです。では世界的な視点で見たとき、トップリーグはどれくらいのレベルに位置づけられるのでしょうか。
現在トップリーグでプレーしている外国人選手の顔ぶれを見ると、そのクオリティの高さは世界に誇れるレベルであると断言できます。世界ランク1位のニュージーランドや同2位の南アフリカ、4位のオーストラリアなどの強豪国でいまも代表として活躍できる選手が何人もプレーしており、各チームで主軸を担っています。昔はテレビでしか見られなかった選手をライブで見ることができ、また選手にすればそうした存在と実際に体をぶつけてプレーできるということは、非常に大きな価値があります。
そうした超一流の外国人選手は、ラグビーをよく知らない人でも、プレーを見ればすぐにわかるすごさがあります。彼らが一様に優れているのはゲームの理解力、いわば「ラグビー偏差値」です。トップリーグでプレーする日本代表クラスの選手にも、やはり同じことがいえます。
もしかしたら2人いる? 超一流選手のおそるべき「ラグビー偏差値」
ラグビー偏差値とは何かといえば、ラン、パス、キック、コンタクトなどあらゆる要素を含んだラグビーという自由性の高い競技において、状況に応じて最適なプレーを選択できる能力です。いわゆる「気が利く選手」と言い換えてもいいでしょう。体が大きいとか足が速いといった身体的なこととは関係なく、その時々にもっともふさわしいプレーを瞬時に判断し、実行できる。ここは、厳しいプレッシャーにさらされる中でどれだけプレーしてきたかという経験が大きくものをいいます。サントリーのフランカーのジョージ・スミス選手(オーストラリア代表111キャップ)やスクラムハーフのフーリー・デュプレア選手(南アフリカ代表65キャップ)、神戸製鋼のジャック・フーリー選手(南アフリカ代表69キャップ)らは、まさにワールドクラスの超一流プレーヤーです。彼らは常にボールのそばにいて、常に決定的なプレーをする。「もしかしたら2人いるんじゃないか」と思ってしまうくらい活躍できるのは、限られたスペースと時間のなかで先を読み、考えながらプレーできているからです。
「なぜこの人たちは何度もプレーに参加できるのか」という視点で試合を観ていると、彼らが決して運動能力の高さだけでプレーしているのではなく、常に状況を読み、考えながらプレーしていることがわかると思います。そうしたトッププレーヤーを観に行くだけでも、いまのトップリーグは十分価値があります。
負けられない試合が続くセカンドステージ。指導陣の手腕にも注目。
2ステージ制を採用したことで、今季のトップリーグはよりチームの底力が問われる戦いになりました。これまでなら先を見据えて時にはベテラン選手を休ませたり、若手を抜擢したりするといった起用法ができたのですが、落とせない試合が続くことで、選手層の厚みがダイレクトに成績につながることになります。コンタクトスポーツであるラグビーは必ずケガが起こるため、同じ選手構成でシーズンを乗り切れることはまずありません。つまり選手を休ませつつ、若手を育てて底上げもしなければならない。そういう点では、いままで以上に監督や指導陣の手腕が問われるシーズンになると思います。
これから始まるセカンドステージを勝ち抜くポイントは、「ピーキング」です。すべての試合を落とせないとはいえ、人間はすべての試合に全力を出せるわけではありません。戦略的にチーム状態をプランニングし、仕上がり具合を勝負に結びつけられたチームが、最終的に勝ち残っていくでしょう。