シェールガス革命を支えるMLP
急激に普及しているMLP、その人気の秘密をチェック
MLPは北米のシェールガスブームの中で、パイプラインや貯蔵設備などのエネルギー系インフラへ投資するものとして急激に普及しました。1990年代後半から存在する形態ですが、エネルギー開発にわく中で多数のMLPが上場し、現在ではMLP銘柄全体で40兆円を超える時価総額規模となっています。中でも最大なのが、時価総額3兆円を超えるキンダー・モルガン・エナジー(証券コード:KMP)です。
高配当が多いMLP
MLPには高配当銘柄が多いです。前述のキンダー・モルガン・エナジーにしても、2013年の予想配当利回りは実に6.7%もあります(2013年10月11日の株価で計算)。MLPが高配当を安定して生み出せるのは、その背景に安定したキャッシュフロー収入があるからです。この点が少し石油会社とは違います。石油会社や鉱山会社の利益は資源価格によって大きく揺さぶられ、キャッシュフローも変動し、その結果、配当額も減ったり増えたりしがちです。
もともとエネルギー企業が多くのMLPを設立し、パイプラインやタンク、タンカーなどを売却してきた経緯があります。エネルギー企業はMLPに長期契約に基づいた設備の利用料を支払います。MLPはパイプラインやタンカー、タンクなどの資産を(投資家からの共同出資によって)保有し、その資産を石油会社相手に運営して収入を得るわけですが、長期契約に基づいているため収入は安定的で投資家にとっては妙味があるのです。石油やガス価格が下がっても、これらの物流収入は下がらず、安定して現金を産み出せるのが強みです。
そして、シェールガス開発ブームでこれらの需要がどんどん増え、配当額も増えているのです。配当額が増え(成長)、人気化することで株価も上がるという好循環です。MLPはリートと同様、共同出資を行い、法人税を払わない変わりに、出た利益の全てを原則投資家に配当する組織で、米国では税制上の優遇もあり、人気化しました。
実際にキンダー・モルガン・エナジーの配当額を見ると、四半期ごと(3カ月ごと)の決算で、年4回配当が出ています。2010年は年間4.40ドルが、2011年は年間4.61ドルが、2012年は年間4.98ドルが、2013年は上半期までに2.62ドルが支払われています。2013年の年間の配当額予想は5.33ドルであり(2013年10月11日の株価で計算すると配当利回り6.7%)、それでいて株価上昇というボーナスまでついています。
基本的に、MLPに長期投資している米国人は税金もほとんどかかりません(ただし下記にあるように税務関係の書類提出は複雑です)。このことでシェールガス開発ブームを支えるのに必要なインフラが、豊富な資金流入によってどんどん建設されてきたのです。
米国は実に、新しいテクノロジーや産業を育てる仕組み作りがうまいものです。旧産業の保護ばかり優先し、昨日と変わらない今日を明日も安定的に流すことに集中する国が、新しい分野に人もお金も流れないようブロックしているのと大きな違いがあります。
日本では投資信託を通してMKPに投資可能
MLPのリスクとしては、銘柄によってはエネルギー企業から買収した設備のある油田やガス田からの収入が減少する可能性があることです。配当を安定させるためには、資金調達を行い、新しい資産の購入を図る必要がありますが、それがうまくいかなくなるリスクはあります。また、もともとMLPは、ブームになる前は大体10%を超える配当利回りでした。しかし近年はブームによって株価が上昇し、配当利回りが6~7%の銘柄が増えています。これをバブルとみる投資家もいます。しかし、それでも高利回りは妙味があり、投資対象として検討するには十分な魅力があります。
米国にはMLP銘柄がたくさんあるのですが、残念ながら日本の証券会社で取り扱っているところはないでしょう。MLPは米国人ですら税関係の書類提出が非常に面倒で複雑だからです。また適正に毎年処理しないとペナルティも存在します。これらの作業を日本から英語で行うのは難しいと思われます。
しかし、MLPに投資を行う投資信託がいくつか出てきているようで、日本でも今後、遅ればせながら、間接的なMLP投資の道が開けてくるかもしれません。注目しておきましょう。
参考:グローバルグロースレポート
※記載されている情報は、正確かつ信頼しうると判断した情報源から入手しておりますが、その正確性または完全性を保証したものではありません。予告無く変更される場合があります。また、投資はリスクを伴います。投資に関する最終判断は、御自身の責任でお願い申し上げます。