保健婦から保健師へ
保健師はかつて保健婦と呼ばれていました。呼び名からも分かるように女性の仕事として認知されていたからです。それが1993年の法改正により男性にも門戸が開かれ、翌1994年の国家試験以降、女性を保健婦、男性を保健士と呼び、2002年より男女別の名称を改め、保健師として統一するようになりました。2010年末時点の厚生労働省のデータによると、保健師の総数は4万5028人。そのうち男性は582人といいますから、割合でいうと約1.3%になります。とても少ないことが分かります。比較のため、同じ年の正看護師数を調べると、総数が95万2723人に対して男性は5万3748人。計算するとおよそ5.6%と、割合で言うと保健師の4倍もいることになります。
男性保健師はおとなしい?
ちなみに、私がよく知る男性保健師は5名いまして、そのうちの4人は若手です。まだ職場に慣れていないこともあるのでしょうが、第一印象は大人しくて物腰のやわらかさを感じたものでした。保健師は本庁とは別棟の保健センターなどに配置されることが多いため、周囲を見渡しても女性ばかりの環境だからでしょうか? まだまだ女性パワーに圧倒されがちな雰囲気も感じずにいられません(笑)。しかしながら、男性保健師だからこそ期待される仕事も多々あります。対象者が老若男女入り混じっているわけですし、男性からの指摘のほうが嬉しいと思っている人だってたくさんいるはずです。まだ認知度が低く、男性保健師が採用されたというだけでニュースになる地域が多いのを逆手に取り、自分をアピールしながら保健活動に持っていくということもできますしね。きっと、同期の誰よりも早く顔と名前を覚えてもらえるはずです。要は本人の工夫次第で仕事のしやすさが変わってくるわけです。
優しく伝える女性的な保健指導も、相手が元気な中高年であれば、男性特有の大らかさと強引さで引っ張るのもいいですし、幼児の健診ではお兄ちゃん保健師として子どもたちの人気を独り占めすることも可能なのです。
母子保健は苦手?
一方、男性から苦手との言葉が良く出てくるのは母子保健です。この分野は昼間に自宅への訪問をすることがあり、女性がひとりだけの時に男性保健師が訪ねることに抵抗を感じる方がいるのは当然のことです。受け手の住民はもちろん、送り出す側の役所も頭を悩ます問題です。何か相談したくても、男性には恥ずかしくて話せないことも多々あります。
たとえば、見知らぬ町に就職したある男性保健師は、
「最初の頃は母子の訪問に行くと『男の人が来たけど何があったんだ?』と不審がられたり、『子供も生んだことないのに、なにが分かるの?』と噂になっていたこともありました」
といいます。
また、ようやく町に馴染み、顔見知りも増えてきたある時、
「知り合いの奥さんから乳房が張って血管が浮き出る感じなのでどうしたらいいかと聞かれ、診ていいものかどうなのか、とても迷ってしまったこともあります」
とのエピソードを明かしてくれました。
地域に溶け込むことが大切
こうした背景もあり、男性が保健師として住民に認知されためには女性以上の努力が必要です。しかし努力が実れば女性以上に頼りにされるケースが多々あり、見知らぬ土地に飛び込んでも順応が早いようです。私の知る男性保健師も複数が地元に溶け込むため青年団や消防団に入り、積極的に地区活動をしていくことで地域の住民に認められています。とくに離島、僻地での保健活動には男性に期待されることも多いといえるでしょう。
ワイルドな保健師に期待!
全国男性保健師のつどいin沖縄より