マンガ・コミック/口コミでおすすめの80年代の少女・女性マンガ

ピアノへの若き情熱が暴走を始める『金と銀のカノン』

ピアノの才能に恵まれながら、経済的な事情で進学をあきらめかけていた真澄が、大財閥の弾正家に入り込み、ピアノの腕もめきめきと上げ、ライバルを蹴落としていく……。ピアノへの向き合い方・コンクールに臨む姿勢などが丁寧に描かれているので、紙面からピアノの音が聞こえてきそうになります。

投稿記事

性格や生活環境の違う2人の少女の物語

■作品名
金と銀のカノン

■作者名
宮脇明子

■巻数
全2巻

■おすすめ理由

私が文庫化されたこの漫画を手に取ったのは、『ヤヌスの鏡』で惚れ込んだ宮脇明子さんの作品だから、という理由でした。「性格や生活環境の違う2人の少女が登場する」ということを知り、
『ヤヌスの鏡』のような展開を期待していました。
実際に『ヤヌスの鏡』を知っている人には、似ているところ・違うところを比べながら楽しめる作品です。知らない人でも「ピアノ演奏」を1度でも聴いたことがある方は、この物語の魅力がお分かり頂けることでしょう。

■あらすじ
樋口真澄は、ピアノの才能に恵まれながら、経済的な事情で進学をあきらめかけています。
一方、弾正容子は大財閥の一人娘として何不自由なく育てられ、音楽学校へも難なく進学を決めました。真澄は『ヤヌスの鏡』のユミのような策士ぶりを発揮して、弾正家に入り込み、ピアノの腕もめきめきと上げ、ライバルを蹴落としていきます。

『ヤヌスの鏡』では、おとなしくて真面目なヒロミは周りの人々に守られており、「ヒロミ自身が真実と向き合う」ということはありませんでした。いっぽう『金と銀のカノン』の容子は、初めこそ真澄の才能にほれ込んで、支援することを決めたものの、真澄の様々な裏工作を知るにつれ「真澄を支援したことは間違いだった」という思いに変化していきます。

私たち読者に、真澄や容子の演奏が聞こえてくることは、本来あり得ません。
しかし、真澄や容子、そして脇役の生徒たちの性格・ピアノへの向き合い方・コンクールに臨む姿勢などが丁寧に描かれているので、彼らの弾くピアノの音が、紙面から聞こえてきそうな気がするのが本当に不思議です。哀しすぎるラストには「これが漫画で良かった。現実だったら耐えられない」とすら思ってしまいます。


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