原爆の10年後、40年後、60年後を描いた作品
■作品名夕凪の街 桜の国
■作者名
こうの史代
■巻数
全1巻
■おすすめ理由
原爆をテーマとして扱った数少ないマンガの一つです。
作者によれば原爆がテーマというだけで相手にしてくれない出版社が多く、『漫画アクション』に「夕凪の街」を載せることができたのは、雑誌休刊直前というタイミングのおかげもあったとのこと。
「夕凪の街」が大反響を呼び、『漫画アクション』復刊後に掲載された続編の「桜の国(一)」と、
書き下ろしの「桜の国(二)」を加えて単行本化され、映画にもなって多くの人々に読まれる名作となったことは、ほんとうに喜ばしい限りですが、もしかすると出版社の都合で日の目を見ることなく終わったかもしれないと思うと、手放しでは喜べない気もします。
本作で描かれているのは原爆の10年後、40年後、60年後。
ふとした瞬間よぎるあの日の光景や、心の中にくすぶる生き残った負い目、何十年たっても消えない放射能の後遺症への恐怖と周囲の偏見などが、ほのぼのした日常のなかの一コマとして描かれることで、かえって強烈なリアリティをもって胸に迫ります。独特のやわらかい線で描かれた絵も魅力的です。