夢枕獏の小説の魅力を余すところなく表現
■作品名神々の山嶺(かみがみのいただき)
■原作
夢枕獏
■作画
谷口ジロー
■巻数
全5巻
■おすすめ理由
夢枕獏の同名小説を、谷口ジローがマンガ化したもの。小説のマンガ化というと、もとから絵がついていて内容もマンガ的なライトノベル以外では、原作の雰囲気をぶちこわすような残念な作品も少なくありませんが、この「神々の山嶺」は別です。緻密な描写で表現された山の美しさ、迫力は圧倒的で、常に死と隣り合わせの登山の緊迫感、恐怖感がひしひしと伝わってきて、読みながら我を忘れてしまいます。
原作小説は、あとがきによれば、10歳から山に登ってきた作者が、自らのすべてを出し切り、これ以上の山岳小説は出ないだろうと自負するもの。その原作小説の魅力を余すところなく表現しきったというか、むしろ、マンガ化によって「神々の山嶺」という作品は真の完成を見たとさえ思えるこのマンガは、間違いなく山岳マンガの最高峰と言えるでしょう。
小説は1998年、第11回柴田錬三郎賞を、マンガは2001年、第5回文化庁メディア芸術祭マンガ部門・優秀賞を受賞しています。