手塚治虫の曽祖父が主人公の隠れた名作
■作品名陽だまりの樹
■作者名
手塚治虫
■巻数
全11巻
■連載雑誌
ビックコミック
■おすすめの理由
本作にはふたりの主人公が存在します。
一人は常州府中藩士の伊武谷万二郎、そして、もう一人は蘭方医の手塚良庵です。
伊武谷万二郎は架空の人物で、手塚良庵(後に良仙)は手塚治虫の曽祖父で実在の人物です。
このふたり、頑固者の万二郎、遊ぶ好きの良庵と性格こそ対照的ですが、なぜかウマが合います。
■あらすじ
物語の舞台は幕末の江戸。
開国、西洋文明と西洋人の流入からやがて訪れる討幕運動、
そして戊辰戦争という時代の流れの上で、ふたりの人生は大きく揺らいでいきます。
幕政改革により幕府陸軍(農兵隊)の隊長となった万二郎は、倒れ行く幕府に忠誠心を尽くすとともに、自分が守りたいと思う人々のために戦い続けることを決心し、彰義隊に参加、蝦夷地へとおちていきます。
一方、良庵は、患者を救うために自分の意思を抑えて官軍の軍医となります。
そして、明治に入り、西南戦争に軍医として従軍するラストシーンで、
手塚良庵が作者の曽祖父であることが明かされるのです。
この物語に流れているのは、歴史に翻弄されながらも、大切な人々のために闘う男の姿です。
名作といわれながらも、手塚作品としては余り知られていませんが、
それだけに読む価値は高いと思います。