我々の生活の延長線上にある「日常」マンガ
■作品名神戸在住
■作者名
木村紺
■巻数
全10巻
■おすすめの理由
アフタヌーンに1998年から2006年まで連載された作品。
神戸の大学に通う学生、辰木桂の視点で神戸の街や友人、阪神・淡路大震災を描いた作品。
(震災に関しては、桂が東京出身で実際の被災経験がないため、彼女の友人、知人の体験エピソードとして語られます。なので完全なる一人称マンガではないですね)
彼女が友人と遊びに行った場所や見た展覧会の詳細、その日食べたメニューなども細かく描かれたりするので、まるで桂の日記を読んでいるような、ちょっと変わった読み味がします。本当に桂なる女性がリアルに存在し、リアルな日常を描いているのではないかと錯覚させられるほど。
よくも悪くもマンガ的ではないマンガです。
この漫画は大学生のフワフワした日常にプラスして震災をはじめ民族問題や障害者の描写など誇張なく真面目に描いています。楽しみや、哀しみ、戸惑い、苦悩など、私たちが日常感じるであろうすべての感情を隠したり飾ったりせずマンガの中に落とし込んでいく作業は作者の描かずにいられない、強い情念があったからできたことのように思えてしまいます。坦々と描いているようだけれども、その下には青白い炎が燃えているような、目に見えない熱い魂が込められているというか。
自分が同じ時期に学生をしていたこともあり、私はすんなり読み進めることができましたが、
ちょっと読む人を選ぶマンガかもしれません。
しかし、しみじみ心にしみるものがある抒情ものとしては稀有な作品だと思います。