自動車と自転車の街、コヴェントリー
ドニントンパークから南へ1時間ほどレンタカーで走った所に、コヴェントリーという街がある。コヴェントリーは日本人が観光で訪れる機会はほとんど無い人口30万人の都市。しかし、コヴェントリー大聖堂を中心とした古い町並みは多くの人が魅了されるに違いない。この街はベルギーチョコレート「ゴディバ」の語源である「ゴダイバ夫人」の伝説が生まれた舞台でもある。コヴェントリーの町並み
コヴェントリーは120年以上前から英国を代表する自動車産業の街のひとつであり、自転車の製造からスタートして後に自動車メーカーへと発展した「ローバー」が生まれた街としても知られる。自転車、オートバイ、そして自動車というこの街の基幹産業ともなった乗り物の歴史を紹介するミュージアムが「コヴェントリー交通博物館」だ。
コヴェントリー交通博物館
「コヴェントリー交通博物館」には200台以上の自動車が展示されている他、オートバイ、自転車も多数展示されている。このミュージアムの展示は自動車産業華やかりし時代の町並みを再現した体験ゾーンもあり、なかなか凝った展示方法になっているのが特徴だ。また、自動車の世界最高速(1227.985km/h)を記録した「スラストSSC」の展示は迫力満点。シミュレーターに乗って、その最高速を出した時の映像を楽しむ事ができる。自動車の歴史に興味のある方ならきっとどれだけ時間があっても足りない程に、学びの多いミュージアムと言える。
世界最速の自動車、スラストSSC
コヴェントリーといえば?
実はこの「コヴェントリー交通博物館」はレース、モータースポーツに関する展示となると数は限られる。しかし、レースの歴史の中で重要な意味を持つマシンも展示されている。コヴェントリーと聞いて、レーシングエンジンを頭に思い浮かべる人はなかなかのF1マニアかもしれない。先に歴史をご紹介した「ヴァンウォール」に続いて1959年、1960年にF1コンストラクターズチャンピオンに輝いたのは英国のコンストラクター「クーパー」。そのクーパーのマシンに積まれたのが1960年代の名レーシングエンジン「コヴェントリー・クライマックス」だ。
コヴェントリー・クライマックスのF1エンジン
コヴェントリーが拠点のコヴェントリー・クライマックス社は元々、消防ポンプ用のエンジンメーカーだったが、このエンジンをレース用に応用したものが後にF1をはじめとするレース用のエンジンとして大成功をおさめることになった。F1には1957年より「クーパー」に積まれて参戦。「クーパー」が作った初のミッドシップF1と見事にマッチし、ついには2年連続のコンストラクターズチャンピオンに輝くことになる。
クライマックスのエンジンは「クーパー」の他に「ロータス」「ブラバム」のマシンにも積まれ、1969年に撤退するまでに多くのプライベーターが使用し、合計4度のチャンピオンエンジンに輝くなど、これぞ60年代の名エンジンと呼ぶに相応しい大活躍ぶりだった。ちなみに1966年にはコヴェントリーのシンボルとも言える「ゴダイバ夫人(Godiva)」の名前がついたV8エンジンがF1 を走った事もある。
意外と目にする機会の少ないティレルの6輪F1マシン、P34
「コヴェントリー交通博物館」にはクライマックスのエンジンの他、1970年代後半の6輪タイヤの「ティレル」のF1マシンなど、少数ながらレース関連の展示を楽しむ事ができる。コヴェントリーはぜひ町並み含めて楽しめるので立ち寄って頂きたい都市だ。
Coventry Transport Museum
住所:Millennium Place, Hales Street, Coventry
行き方:コヴェントリーの中心地にある。ロンドン・ヒースロー空港からはM40で北上し、A46を使い1時間半のドライブ。ロンドン・ユーストン駅から鉄道でコヴェントリーに行く事もできる。
Coventry Transport Museum 公式サイト(英語)
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