精神保健福祉士の業務
以前「精神保健福祉士とは」でも書きましたが、精神保健福祉士法第2条では精神保健福祉の業務を次のように規定しています。「精神障害者の保健及び福祉に関する専門的知識及び技術をもって、……」と示されているとおり。精神障がい者を対象としたソーシャルワークに特化した資格です。精神保健福祉士が支援の対象とする精神障がい者は、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)第5条で次のように規定されています。精神障害者の保健及び福祉に関する専門的知識及び技術をもって、精神科病院その他の医療施設において精神障害の医療を受け、又は精神障害者の社会復帰の促進を図ることを目的とする施設を利用している者の地域相談支援(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 (平成17年法律第123号)第5条第17項に規定する地域相談支援をいう。第41条第1項において同じ。)の利用に関する相談その他の社会復帰に関する相談に応じ、助言、指導、日常生活への適応のために必要な訓練その他の援助を行うこと(以下「相談援助」という。)を業とする者をいう。
精神保健福祉士の多くが、ソーシャルスキルトレーニングという、精神障がいのある人が社会生活するためのスキルを獲得していく認知行動療法の一種を担っています。そういった点からも、社会福祉士が広範囲なジェネリック・ソーシャルワーカーであるのに対して、精神保健福祉士は精神障がいに関するスペシフィックなソーシャルワーカーであるといえるでしょう。精神障害者とは、統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者をいう。
精神保健福祉士が従事している職種
それでは、実際に精神保健福祉士はどういう職種に従事しているのでしょうか。精神保健福祉士の職種は、精神医療機関における精神科ソーシャルワーカー(PSW)が代表的ですが、それだけではありません。実際の精神保健福祉士の職種の例は下記のとおりです。生活支援に関わる職種
就労移行支援事業所、就労継続支援事業所、地域活動支援センター、グループホームといった障害福祉サービス事業所の生活支援員などのスタッフ
生活保護法の救護施設や更生施設の生活指導員などのスタッフ
相談支援事業における相談支援専門員などのスタッフ
行政機関に関わる職種
保健所、福祉事務所、精神保健福祉センターなどの相談職
その他、法務省の保護観察所において、重大な罪を犯した精神障がいのある人を対象とした精神保健観察の業務を行う社会復帰調整官といった職種もあります。また、依存症の自助グループに、精神保健福祉士の資格のあるスタッフが活動している場合もあります。
精神保健福祉士の仕事の実際
ソーシャルワークは、人と人との関わり合いの仕事といえるでしょう。ですから、言葉がけや態度など、コミュニケーションが大切な要素となってきます。とりわけ精神障がいのある人とのかかわりは、精神障がいというその障がいの特性をよく理解した上で行わなければなりません。また、精神障がいのある人の多くは、今までの生活の中でつらい思いをした人が多く、そういった人たちに文字通り寄り添うような支援が求められるともいえます。そういった意味で、精神障がいのある人への保健福祉を担う精神保健福祉士は、極めて高い専門性が要求されている仕事であるといえましょう。仕事としてこういった支援が充分にできるようになるためには、精神保健福祉士としての仕事に就いてからが勉強といえるのかもしれません。調理師や美容師などの職人的な職業と同様に、精神保健福祉士といったソーシャルワーカーについても、その技術や知識をのばしていくのは資格を取ってからともいえますが、その基礎となっているのは、福祉の心ともいえる倫理であるといえます。
さらに広がる精神保健福祉士の職種
社会における精神保健福祉士の役割はどんどん広がってきている
このように、精神保健福祉士の活躍する職種は広がってきています。また、PSWの資格である精神保健福祉士という点では、社会福祉士と比較して、業務独占的色彩の強い資格であるといえましょう。今後、精神保健福祉に関わるスペシフィックな専門職として、精神保健福祉士の社会におけるニーズはさらに高まっていくものと考えられます。