「NFC」とは一体何か?

NFCは「近距離無線通信規格」の1つなのですが、唐突にそんなことを言われても何のことかさっぱり分からない人がほとんどでしょう。

そこで思い浮かべて欲しいのが、SuicaやPASMO、楽天Edyなどの非接触型電子マネーカードです。こうしたカードは、専用のリーダーに近づけた時だけお金のやり取り、つまり無線で通信をする仕組みとなっています。NFCはこうした電子マネーカードなどと同様、極めて近い距離に近づけた時だけ、無線で通信するという仕組みを実現する規格の1つなのです。
iPhoneも7からNFCが導入され、SuicaがiPhoneでも使えるようになった

iPhoneも「iPhone 5S」からNFC(Type A/Type B)を導入。iPhone 7以降の機種ではFeliCaに用いられているType Fも採用されたため、Suicaなどが使えるようになった

日本における近距離無線通信規格といえば、先に触れたSuicaなどのほか、携帯電話を専用のリーダーにタッチして決済をする「おサイフケータイ」などに使われている「FeliCa」のベースとなる「ISO18092 Type F」がよく知られています。ですが近距離無線通信は、他にもいくつかの規格が存在するのです。
NFC

モバイルSuicaなどの“おサイフケータイ”機能にはFeliCaに用いられているNFCの「Type F」が用いられている

例えば「ISO14443 Type A」は、たばこの自動販売機「taspo」などに採用されています。また同じく「ISO14443 Type B」は、運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなどに採用されています。また「ISO 15693 Type V」のように、物流用の商品タグに用いられる規格も存在します。

このように近距離無線規格は、国や用途によって複数の規格が入り乱れて用いられる複雑な状況にあったことから、それらをひとまとめにしたのが「NFC」です。つまりNFCは、Type A/B/Fといった従来の規格と互換性を持つ、近距離無線通信の国際標準規格なのです。
NFC

NFCは現在用いられている複数の近距離無線規格の上位互換となる規格だ
 

NFC搭載=FeliCa搭載ではない

ただそうはいっても、NFC搭載をうたうスマートフォンの全てに、FeliCaが搭載されている訳ではありません。確かにNFCはType A/B/Fの上位規格ではあるのですが、スマートフォンメーカーがNFCの全ての無線規格を採用するとは限らないからです。

特に最近ではスマートフォンの大幅値引きが規制され、低価格のスマートフォンの人気が高まっています。そのためメーカーがスマートフォンの値段を下げるためNFC自体搭載しない、あるいは日本以外でほとんど使われていないType F、つまりFeliCaだけを搭載しないケースも増えているのです。
Find X2 Pro

auの5G対応スマートフォンの1つであるオッポの「Find X2 Pro」は、NFCには対応するがFeliCaは非搭載となっている

それゆえスマートフォンでおサイフケータイなどを使いたい人は、NFC搭載だけでなく、FeliCaに対応しているかどうかを必ずチェックするようにして下さい。iPhoneであればiPhone 7以降であればFeliCaに対応していますが、Androidの場合は対応がまちまちなので、特に海外メーカー製の安価なスマートフォンを選ぶ際は注意しましょう。
 

実はFeliCaがなくても使えるタッチ決済がある

ではNFCがスマートフォンに搭載されることで、何ができるのかというと、1つはやはり接触ICカードの代替としての活用です。先に挙げたおサイフケータイがその代表例ですが、最近ではVisaなどのクレジットカード会社が提供するType A/Bを用いたタッチ決済も、大手コンビニエンスストアやファストフード店などで使えるようになってきています。

iPhoneであれば「Apple Pay」にマスターカードやJCBブランドのクレジットカードなどを登録すれば、このタッチ決済が利用できますが、Visaのタッチ決済には対応していません。一方Androidスマートフォンの場合NFCを搭載していれば、FeliCaに対応していなくても、「Google Pay」にVisaブランドのクレジットカードやデビットカードなどを登録することでタッチ決済の利用が可能になります。
Visaタッチ決済

Visaなどのタッチ決済は、Type F非対応であってもNFCのType A/Bに対応したスマートフォンであれば利用できる


ちなみにType A/Bによるタッチ決済は、欧米を中心に海外で急速に広まっていることから、海外旅行に行く際には登録しておくと便利です。
 

マイナンバーカードによる手続きにも活用

そしてもう1つはリーダー・ライター機能です。これはNFCに対応したスマートフォンを使い、NFCのICチップに保存されているデータを読み込んでさまざまな用途に活用できるというもの。国内での代表的な利用方法となるのはマイナンバーカードの読み取りです。
マイナンバーカード

マイナンバーカードにもNFCが搭載されており、対応するスマートフォンを使えば今後、さまざまな行政手続きにも活用できる

政府は行政手続きのデジタル化を推進するべく、マイナンバーカードを活用した電子行政手続きの導入を進めており、マイナンバーカードとNFC対応スマートフォンを使ってできる手続きが急速に増えています。実際2020年には、e-Taxによる確定申告の申請にNFC対応スマートフォンの利用が可能になりましたし、同年に実施された「マイナポイント事業」では、NFC搭載スマートフォンとマイナンバーカードを用い、マイナポイントの申請が可能となっています。

ただしマイナンバーカードに用いているType Bは、FeliCaと比べカードの読み取り速度があまり早くありません。それゆえマイナンバーカードを読み取る際は、スマートフォンをカードに少々長くかざす必要があることを注意して下さい。

またマイナンバーカードを利用する上では、マイナンバーカード対応したNFC搭載スマートフォンを使う必要がある点にも注意が必要です。iPhoneであれば、NFCのリーダー・ライター機能に対応したiOS 13以降をインストールしたiPhone 7以降の端末であれば利用できますが、Android端末の場合メーカーによって対応にばらつきがあるようなので、公的個人認証サービスのポータルサイトであらかじめ確認しておくのがよいでしょう。
 

周辺機器の接続にも活用、スマート家電で利用が増える?

リーダー・ライター機能の活用例としてもう1つ、スマートフォン向けの周辺機器と接続するのにNFCを活用するケースもいくつか見られます。なぜNFCを接続に使うのかというと、タッチするだけで手軽かつ確実に機器との接続ができるからです。
NFC

ソニーのBluetoothスピーカーには、NFCでスマートフォンとタッチするだけで認証できるものが多い

最も多く見られるのが、ワイヤレススピーカーなどをスマートフォンにBluetoothで接続するケースで、対応した機種であればスマートフォンで専用アプリを起動した後、本体のNFC部分にスマートフォンでタッチするだけで、Bluetoothの機器同士をつなぐ「ペアリング」と接続を同時にしてくれるのです。通常、スマートフォンでペアリングをするにはいくつかの手順を踏んでパスコードを入力したりする必要がありますが、NFCを使えばそうした手間が不要になるのです。

今後はネットワークにつながる「スマート家電」が日本でも増えると考えられることから、そうしたスマート家電対応機器とスマートフォンを接続するのに、NFCが用いられるケースが増えてくるかもしれません。
 
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