旧万世橋駅高架下とその周辺の開発
中央線が走る高架線は赤レンガ積みの擁壁を持つ土盛アーチ高架橋である。長年の風雪に耐えてきたため、ところどころ傷みもあるが、かえって風格を感じさせる。アーチの真ん中付近には、「メダリオン」と呼ばれる丸い石の装飾があり、これはドイツの首都ベルリンの高架橋と似ている。当時、技術指導をしたのがドイツ人だったからだと思われる。高架下にカフェや物販を展開する商業施設「マーチエキュート万世橋」が入るため、近代的な装いを施しているが、ヨーロッパの旧市街のように赤レンガとうまく調和した造りになっているのは好ましい。高架下内部の壁は、幾重にもアーチ状にくりぬかれた通路となっていて落ち着いた感じだ。北側の神田川沿いには、親水デッキが設けられ、通路や遊歩道として賑わいそうだ。
三つの広場の見どころ
かつて交通博物館があった場所には、JR神田万世橋ビルが建っている。かなり広いオープンスペースがあり、様々なモニュメントが点在している。通りに面して、かつて交通博物館入口だったところには、東海道新幹線0系と蒸気機関車D51形のカットモデルが置いてあった。その跡地にあたる「ゲート広場」には、線路の断面をかたどったマークが線路幅ほどの間隔をおいて描かれて、さりげなくかつての場所を暗示している。
小川町、淡路町方面のJR神田万世橋ビル前のスペースは、かつて旧万世橋駅前広場があったところで、「記憶の広場」と名付けられた。中央にぽつんと線路を垂直に立てたようなモニュメントがある。それを中心に同心円状に様々な鉄道の歴史的事象を年号と共に刻んでいる。待ち合わせなどの際の退屈しのぎになりそうだ。片隅には、万世橋駅舎や交通博物館の写真パネルが3枚等間隔に並び、アクセントとなっている。
ビルの西側、御茶ノ水寄りのスペースは「憩いの広場」と言う。レンガを積んで造ったようなベンチがいくつかあり、寛ぎのコーナーとなる。また、地下にあった旧万世橋駅舎基礎部分(土台)を保存し、ガラス張りの板を広場にはめ込み、上から見ることができるようにした「遺構サークル」がある。