先駆けてゴールドカードを発行したアメックスの思惑とは
日本で一番最初にゴールドカードを発行したのは、アメリカン・エキスプレス(以下、アメックス)といわれています。そのため、日本のゴールドカードには、アメックスのゴールドカードに影響を受けているものが多くあるといえます。アメックスは、もともと米国でトラベラーズ・チェック(旅行小切手)を発行する事業を手がけていました。1958年に、米国のホテル組合が運営していたクレジットカード会社を買収し、クレジットカード事業に乗り出したとされています。
旅行にはお金が必要ですが、多額の現金を持つことは、紛失や盗難の恐れがあるので危険です。また、海外で数か国を訪れるようなケースでは、訪れる先々の国の通貨を用意しなければなりません。そうした手間を省けるトラベラーズ・チェックを発行していたアメックスが、より利便性の高い、クレジットカード事業に乗り出したことは当然の成り行きといえましょう。その後のクレジットカードの進化は、旅行で恩恵があるサービスの進化と言っても過言ではないと思います。
そうした経緯を考慮すると、アメックスのゴールドカードに影響を受けている日本のゴールドカードが、海外および国内旅行傷害保険を充実させたり、空港ラウンジを無料で使えるサービスを提供していることなどは、うなずけるところです。
(日本のゴールドカードがアメックスのゴールドカードに影響を受けている、という見方は、識者の見解の分かれるところかもしれません。アメックスは、ゴールドカードを1980年に出し、その後、1983年に券面がグリーンの一般カードを出しているからです。現在でもそうですが、この年会費1万2600円の一般カードは、サービス内容では日本のゴールドカードに相当します。いずれにしても、アメックスのサービスに影響を受けていることは間違いないでしょう)
旅をしないユーザにはゴールドカードは実用的でない?!
ゴールドカードのサービス内容については、ある程度理解して頂けたと思いますが、ユーザーとして重要なのは、そのサービスに実用的なメリットを感じられるかどうかです。その視点に立ってみると、前回紹介した旅行傷害保険や空港ラウンジの無料利用については、あまり魅力を感じない人の方が多いのではないでしょうか。実は、筆者もそのひとりです。空港ラウンジの無料利用などは比較的利用しそうなサービスですが、空港に行くのはチェックインの締め切り時間ギリギリだったり、空港内での買い物が忙しかったりと、一度も利用したことがありません。結論的には、出張や旅行にあまり縁のない人には、ほとんどメリットが無く、年会費に見合うとはいえません。
そうした事情により、いつしかゴールドカードの人気は低調になっていきました。折しも、日本経済はデフレ状態が続き、ゴールドカードを使ってどんどん消費をするというよりも、お得なカードで賢く利用してポイントを貯める、という方向にユーザーの興味は向かったのです。ゴールドカードの人気凋落は、時間の問題だったといえるでしょう。
そんなゴールドカード離れの風向きが変わったのが、従来の常識を破る、格安な年会費で入れるゴールドカードの登場でした。カード会社は、ゴールドカードのサービスを縮小し、ステータス感を薄めて、年会費を下げることで、ユーザーを増やす方針を打ち出しました。そうした廉価版ゴールドカードについて、次回の記事でご紹介しましょう。